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2022.11.07

WING

第164回「日本が危ない」防衛費と安保関連費を混同するな

海保予算は防衛費なのか
安倍政権方針は事実無根

 

 防衛費をめぐる政府内の攻防が激化している。焦点となっているのが海上保安庁の予算を防衛費に合算するかだ。官邸サイドは防衛費に加えることは考えていないと否定するが、財務省内には「水増し」を画策している幹部もいる。そもそも防衛力を強化するためには、海保を各国の沿岸警備隊と同様に「準軍事組織」にすべきだがその道のりは遠い。
 ある寄稿が政府内で波紋を広げている。内閣官房参与で前防衛次官の島田和久が産経新聞10月22日付に書いた「海保予算の防衛費上乗せに妥当性なし」の寄稿だ。
 「防衛費を北大西洋条約機構(NATO)基準にすることにより、海上保安庁(海保)などの予算も防衛費に上乗せする方向だと報じられている。しかも政府関係者が、海保の上乗せは、安倍晋三政権の時に決めた方針だと説明しているらしいと聞く。ちょっと待ってほしい。安倍政権において、そのような方針を決めた事実はない。『海保の予算は防衛に直接関係する経費ではない。しかし、いわば安全保障に関連する経費ではある』という当たり前の整理をしたことがあるだけだ」
 海保の予算を防衛費に上乗せするとの情報を流したのは読売新聞が最初だ。9月10日付で、「防衛費、海保予算も含めた算定方法の導入検討へ」との見出しで、複数の政府関係者の話として「防衛費の増額に際し、防衛省予算以外の予算を計上するNATO基準を参考にした算定方法を導入する検討に入った。海保などの安全保障に関連する予算を防衛関係費として一体的に位置づける」と報じた。
 日経新聞も9月14日付で、政府が来年度予算から「各府省庁の安全保障に関係する経費を合算する『国防関係予算』の枠組みをつくる検討に入った」と続いた。NATOは沿岸警備隊や国連平和維持活動(PKO)関係費などを国防費と定める。日本の場合、海保は国交省、PKOは外務省や内閣府の予算で防衛費には入れていない。

 

捏造された遺言に苦言
トランプ対策がきっかけに

 

 首相、岸田文雄は5月の米大統領ジョー・バイデンとの首脳会談で、「防衛費の相当な増額(substantial increase)を確保する決意」を表明した。加えて自民党は7月の参院選で5年以内に国内総生産(GDP)比2%以上も念頭に防衛費を増やすとの公約を発表した。2022年度当初予算はGPD比1%の5.4兆円で2%にするには年に1兆円ずつ増やさなければならない。

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