航空会社レポート その3【ハワイアン航空】
多様化する顧客ニーズに対応
新しいマーケット創出も視野に
日本人の需要回復がカギ
「戻る前提」ではなく、まずは状況分析
現在、ハワイアン航空は、羽田と成田、関西からそれぞれ毎日1便ホノルルへ運航。昨年の夏以降、渡航制限が段階的に緩和されるなか、「需要は確実に戻っている」状況にある。ただ「オーストラリアや韓国など、他のマーケットの戻りが早く、日本マーケットは期待ほど戻っていない印象」という。
円安やアメリカでのインフレ、国内旅行需要が盛り上がっている点など、いくつかの要因はあるが、伊東氏は「日本路線は、日本からのアウトバンド需要がほとんど。まず日本人が戻ることが重要だ」と強調する。
また、旅行の傾向として指摘するのは、旅行計画の変更に柔軟に対応できる層と、ビジネスクラス利用客の増加。「これまでの4泊6日の旅行スタイルから、より長く、柔軟に計画できる層が増えている」とのことだ。
伊東氏は、「コロナ前の2019年レベルに戻るのか、また新たなハワイへの旅行需要を作っていくのか、両方に対応できるようにしたい」と説明。そのためにも現状の把握は重要。「お客様やパートナーである旅行会社の声やデータを見極めながらやっていきたい。戻る前提ではなく、しっかりと状況を見極めたい」と語る。
「需要に合ったものを提供」
アンシラリーの拡充、予約変更可能な運賃
一方、旅行会社に対しては、「コロナ禍においても、可能な限り旅行会社の方々と商品造成の面で協議を続けてきた」とのこと。現在、需要が回復するなか、伊東氏は「お客様のニーズが変わってきた。旅行パターンを旅行会社の皆様と情報共有することで、需要に合ったものを提供していきたい」と語り、引き続き旅行会社との協業も通してニーズの多様化に対応していく姿勢を示す。
具体的には、まずアンシラリー(付帯)サービスを拡充。昨年10月からは、日本路線において「プリファードシート」の運用を開始。追加料金を設定することで、エコノミークラスの通路側や搭乗口に近い座席を予約できるサービスだ。足元の広い座席で、優先サービスやアメニティが付く「エクストラ・コンフォート」同様、「価値を見出すお客様に提供していきたい」考えだ。
また同社はすべての運賃が変更可能。急な予定変更にも対応できる態勢を整える。伊東氏は「状況に応じて必要なものを形にしていきたい」と語る。
こうした対応を進める上でも、やはりベースとなるのは旅行会社との関係だ。
「運航計画をしっかりとしたものにするには、旅行会社の皆様の力添えが不可欠。良い形に関係を深めてきたい」とのこと。さらに「昔のものにとらわれずに話を進めていきたい」と述べ、ニーズに特化した旅行会社や部署など、新しいパートナーシップの構築にも前向きだ。
伊東氏は「観光局や旅行会社からアドバイスを頂いたり、また意見交換を行ったりすることで、新しいハワイマーケットを活性化、共に作っていきたい」と意欲を見せる。
教育旅行に注力
地方需要の開拓にも
教育旅行の需要開拓にも力を入れる。英語学習や平和学習、さらに自然豊かなハワイは、SDGsや環境に関する教育素材が豊富。伊東氏は「2021年は福岡県とハワイ州の姉妹提携が40周年、2022年は北海道とハワイ州との友好提携が5周年を迎えた。日本とハワイを結ぶ懸け橋として、教育旅行を通じた学生の相互交流を推進していきたい」と意欲を見せる。地方需要の喚起においても教育旅行が重要とのスタンスだ。
ハワイの航空会社としての使命
「Travel Pono」責任ある行動を提唱
ハワイ州観光局(HTJ)が進めている「マラマハワイ」に関しては、「ハワイの航空会社として」積極的に関わっていく。伊東氏は「多くの人をハワイに運ぶだけでなく、ローカルコミュニティの一員としての責任がある」と強調する。
具体的な取り組みとしては、「Travel Pono」と題し、ウェブサイトやSNS、動画や機内ビデオを通じて、ハワイの自然環境や文化を守り、配慮するためのハワイでの責任ある行動を促すほか、日本マーケットの取り組みとして、「ハワイおもてなしキャンペーン」を実施。これは搭乗券を提示するとハワイ現地で特典が受けられるもので、「地元での消費を通じて、ローカルビジネスをサポートする」目的もある。
ハワイアン航空「Travel Pono」ウェブサイト
https://www.hawaiianairlines.co.jp/travelpono