【潮流】コロナ後の処理
新型コロナウイルス感染症の規定が5月8日に2類から5類に変わり、社会生活がコロナ前に戻りつつある。旅行業界の日々のニュースを見ても、人々の生活、暮らしに根付く祭りなどの年中行事がようやく再開し、それらに対する旅行ビジネスも戻りつつある。「コロナ後」「ポストコロナ」という言葉も現実を持って迎えられようとしている。
ただし、新型コロナは収束したというよりも、インフルエンザや風邪のように日常的な病気として今後も付き合っていかなくてはならないようだ。
5月8日以降に新型コロナに感染した人も数多くいる。市販の抗原検査キットを使って検査したところ陽性の結果が出て、翌日、病院で検査したところ陽性と判断されて2回目の感染。その後1種間、自己判断で外出を自粛し、コロナから回復した。
その間、家族との接触は極力控えたが、細君が体調不良を訴えたため、病院で検査を受けたところ陰性だった。診断した医者に聞いたところ、体が新型コロナウイルスと戦って、免疫性が落ちており、それにより体調不良を引き起こしている。コロナは陽性でなくても、体調を悪化させる。
よく、風邪ではないが、「風邪気味」「風邪っぽい」という。これと同じで、これからは「コロナ気味」「コロナっぽい」も使われそうだ。5類というのはそういうことなのかもしれない。重篤になる確率は低くなったものの、そういう症状が続くなら、5類になってもコロナは厄介な病気なのだと思う。
風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルスは異なる病気だが、今後は風邪やインフルエンザと同様に、コロナも日常的な病気として扱われてくるのだろうか。
それでも、コロナ禍のこの3年間を決して忘れることはないだろう。新型コロナウイルスに感染して亡くなった方やそのご家族もたくさんおられる。新型コロナウイルスに感染した方も実際の数字よりも遥かに多いだろう。
そして、新型コロナウイルス感染症の世界的流行に酔って大打撃を受けだ産業界、とりわけツーリズム産業にとっては「コロナ後」「ポストコロナ」は例えに問題はあるかもしれないが「戦後」のような意味合いを感じてしまうところがある。
トラベル懇話会の通常総会後の懇親会で、来賓として来られた日本旅行業協会(JATA)の髙橋広行会長が、海外旅行のこれからの本格再開を前に、このコロナの3年間を経験した経営者の方々を前に「戦友」と表現されたが、自らも経営の渦中にいて同じ想いを強く持った。
二度と経験したくはないが、この体験をどう乗り越えていくべきなのか、そしてどう伝えていくべきなのかを考える。
旅行業界は新型コロナウイルスの影響で、2020年4月から2023年5月までの3年2カ月間に、累計で廃業を官報公示した旅行会社数は1786社に上る。今後も増え続けるだろう。旅行業界をやむなく去り、転職した人々の多くは戻りたくても戻れない。新しく旅行業界に参入する人も少なく、観光を志す学生も少なくなっている。旅行・観光業界の人材不足は最も深刻な問題だ。
新型コロナウイルスの世界的大流行による旅行事業の消滅。雇用調整助成金の特例措置、持続化給付金の受給、事業再構築などの助成支援、無利子無担保の金融支援、Go Toトラベル事業、全国旅行支援事業、ワクチン接種等の受託事業の拡大などによって経営維持、再建、黒字化を果たした一方で、それらによる不正問題の発覚。
国内旅行、訪日旅行に比べて遅れている海外旅行の復活は最重要課題で、海外旅行が本格的に回復しないことには、コロナ禍は終わっていないのだが、一方で、旅行業界の一連の不正問題の再発防止に業界挙げて取り組まなければならない。
この問題で「旅行業界の信頼が揺らぐ」と言うのは簡単だ。しかし、これまでの不正受給や過大請求の一連の問題は、コロナ禍による旅行業界における未曾有の経営危機の中で起きたことであり、「コロナ後の処理」として、再発防止策を旅行業界全体として提示しなくてはならない。それが「戦友」の務めではないかと思う。(石原)