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2023.06.22

「カナダの、その奥へ―。」 旅行会社の取り組み ①

フェロートラベル Fellow Travel

代表取締役社長 水澤 史 氏

 

 海外スキーやハイキング、サイクリングのスポーツ旅専門ツアーを手掛けるフェロートラベル。1980年代のスキーブームにおいて、カナダのスキーツアーを企画、現在は約6割をリピーターとその紹介が占める。まだコロナ禍の2022年4月にいち早く海外旅行商品の販売を開始するなど、顧客の潜在ニーズを捉えた戦略に力を入れる。

パウダースノーを滑走

 

「思いっきり純粋にスキーを楽しむ」カナダならではの魅力を伝える

 

 同社のスキーツアーの取り扱い方面は、ヨーロッパ、北米、オセアニア、南米、そしてカナダがメイン。水澤氏は「カナダにしかない魅力を最大限に引き出し、それをお客様にしっかり伝えることが大切」と答える。名峰と滞在を楽しむ「バカンス」スタイルのヨーロッパに対し、カナダは手つかずの大自然と「スキーを思いっきり楽しむ」のが特徴だ。
 ハイキングやサイクリングも同様。例えば、日本で海外サイクリングと言えば、 フランスやイタリアをはじめとするヨーロッパをイメージしがちだが、自由に楽しめるカナダのサイクリングは、ロードバイクやグラベル、マウンテンを一度に楽しめるなど、「ヨーロッパの人たちに人気」とのこと。こうした魅力を伝えることで、カナダのサイクルツアーは、「まだ日本マーケットに認知されていない分、大きな伸びしろがある」という。

 

広大なカナダを「知り尽くす」ツアーだからできる体験を商品化

 

 ツアー化にあたっては、「まず自ら現地へ出向いて、実際に体験し、泊って、現地の人よりも詳しくなるくらいに知り尽くす。そこから素材を吟味してツアーに落とし込んでいく」点を重視する。
 特にカナダは「国土が広大な分、未知なる観光素材が点在し、まだまだ掘り起こす価値がある」という。一方で「同じ景観が連日続き、単調にならないような配慮、アレンジも必要」と考える。
 現地へ訪れる前には念入りな事前準備を行う。情報収集をする上で、トレードショー「RVC」の参加や、不確定要素がある場合は実際に出張して独自にリサーチすることも重要。「今は自分で旅行手配ができる時代。マーケットにツアーが必要とされるかどうか。ツアーでしか味わえない体験、ツアーでしか行けないエリア、デスティネーションをいかに提供していくかが大切」とのスタンスだ。
 具体的には、ヘリスキーやキャットスキー、バックカントリー、野生動物たちの触れ合い、オーロラとのコンビネーションなど、カナダならではの体験、またカナダ西部にとどまらず、オンタリオ州やケベック州など、東部のスキーやサイクリングのツアーを新たに手掛けるなど、新たな顧客獲得に加え、ヨーロッパ好きなリピーターへの提案も進める。ほかにもニューファンドランドや北極圏のツアーといった、他にはないユニークなものも企画する。

 

ケベック州でサイクリング

 

現地の人との交流の場を提供 価格も意識、早期販売でニーズに応える

 

 ツアー造成においては「現地の人達を巻き込む」点にも力を入れる。「現地の人達と交流できる場を提供することで、旅の深い思い出となるだけでなく、カナダ人のアイデンティティーにも触れることができる」とその狙いを語る。地元の人にとっても、ツアー参加者たちとの交流は「良い影響を与える」ようだ。
 また、円安傾向や物価高でツアー料金が高騰するなか、「ハイエンドのツアーを作るだけでなく、時期やホテルを工夫するなど、リーズナブルな商品造成で行きたい人のニーズに応えていく」考え。今年の6月末から2024年の下期シーズン商品の販売を開始するなど、早期販売で「欧米マーケットよりも先に抑えること」にも取り組んでいる。

 

次世代へつなぐキッズキャンプ ファミリー層を意識

 

 次世代へつなげる取り組みも進める。ファミリー層を意識したウィスラーのキッズキャンプはその一例。世界中から子供たちが集まり、共同生活をしながらスキーを楽しく学ぶ。「教育を通じて、先住民族から伝わるカナダならではの自然との向き合い方を知ることができる。英語を学ぶのはもちろん、自らコミュニケーションすることで多様性や自主性も身につけられる」と、その意義を強調する。
 キッズキャンプに子供の頃参加し、その後成長して再びカナダへ留学、英語を使った仕事に就く人も多くいるという。幼少期のスポーツを通じたカナダでの体験がその後の人生に大きな影響を与える。「現地関係者とのコラボレーションで教育プログラムの機会を提供したい。その土壌はたくさんある」と、さらなる拡大も視野に入れる。
 現地サプライヤーと協力した全く新しい「スーパーニッチ」なマーケット開拓は、「日本市場が必要」と思わせる取り組みにもつながる。「次世代へ向け、旅が生み出す価値、可能性を継承できるようなものを作っていきたい。カナダ観光局、各州/準州観光局、各サプライヤーは日本マーケットの復活に期待してくれており、少しでも結果を示し、その期待に応えたい」と意気込みを見せた。

 

 

 

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