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2023.07.13

WING

第180回「日本が危ない」誰がために先端技術があるのか

横流しで研究成果だだ洩れ

情報管理の不備が露に

 

 日本の先端技術の研究成果を中国企業に横流ししていた疑いで、国立研究開発法人「産業技術総合研究所(産総研)」(茨城県つくば市)に勤務していた中国籍の男が警視庁に逮捕された事件は、我が国の情報管理の不備を改めて露呈した。米国と中国による経済対立が激しさを増すなかで、日本も経済安全保障の強化に乗り出しているが、今回のような事例は氷山の一角であるとみられる。官民挙げて、情報漏洩対策に早急に乗り出す必要がある。
 逮捕された権恒道は1984年に南京理工大学を卒業し、中国や日本で研究活動を行い、2002年4月から産総研に研究員として勤務し、フッ素化合物の合成技術の研究に従事していた。2018年4月に研究成果を中国企業にメールで送り、産総研の営業秘密に当たる情報を漏洩した疑いで、不正競争防止法違反容疑で、6月15日に警視庁に逮捕された。
 捜査関係者によると、中国の会社はメールを受信した一週間後、権が送ったデータを流用したとみられる特許を中国国内で出願し、2020年6月に登録された。これによって、研究データの新規性が失われ、産総研は日本や中国で特許を取る機会を奪われたことになる。
 権は産総研で勤務する一方で、2006年から北京理工大学で教授を務めていたほか、12年には今回の流出先とは別のフッ素化学製品製造会社を中国国内に設立し、会長に就いていた。
 18年1月には中国国家主席、習近平も出席した「全国科技大会」に出場し、「国家科技発明2等賞」を受賞した。華僑団体のホームページには「中国に大きく貢献した」と称えられ、習と握手する写真も掲載されている。
 権はこの会社を含む複数の中国企業の経営に携わりながら、義務付けられていた兼業の報告を産総研に行っていなかった疑いも持たれている。

 

学び舎に隠れる国防施設
先兵が日本の大学へ留学

 

 フッ素化合物のうち、フロンガスは中国企業が世界の大きなシェアを握るエアコンなどに利用されるが、先端半導体の製造にも使われる。なかでも危険なのは高純度の六フッ化ウランで、核兵器製造に向けた遠心分離機によるウラン濃縮に使われる。

 

日本の学び舎に中国の影が入り込む(防衛大学校HPより)

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