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シリウム、中国発着国際線は回復の道のり険しく
9月もパンデミック前比48%割れ、国内線は好調
英航空分析大手のシリウムは、パンデミック後の中国国際便の回復が「険しい道のりにある」ことを指摘した。
シリウムでグローバルコンサルタントを務めるロブ・モリス氏によれば、今年1月には中国の航空座席供給量は2019年水準まで回復し、9月頃まで増加し続け、コロナ前水準を30%上回ると予想。これは「圧倒的に国内旅行によるもの」との分析し、中国発着の国際線の回復は依然として険しい道のりにあることに言及した。
※グラフ=中国の座席供給量は好調な伸びがみられる。主因は国内線市場だ(提供:シリウム)
シリウムのスケジュール・データによると、今年6月の国際線の座席供給量を示す有効座席キロ(ASK)は、パンデミック前の水準と比べて 50%以上減少していたとのこと。これが9月の段階になっても、平均で48%下回ったままの状態に留まる見通しで、中国を発着する国際線の座席供給量は伸び悩む見通しにあるとした。
なかでも、「2019年9月には中国発着の国際線の座席供給量の約16%を占めていた米国-中国線の運航便数は、運航路線の権利や地政学的な問題により、今年9月には80%以上減少しているだろう」との見解を示した。
機材稼働率も回復せず
広胴機稼働時間は1日7.5時間
また、中国系航空会社では、世界に比べてフリートを十分に活用することができていないとのこと。モリス氏は、「世界的に見れば、機材稼働率は2019年の水準に戻っている」ことに触れつつ、「中国については単通路機、広胴機ともに19年水準には回復していない」という。
とりわけ広胴機の稼働率が落ちていて、中国の広胴機の稼働時間は1日平均7.5時間に留まり、世界の平均の約12.5時間を大きく下回っているとした。
モリス氏は「(広胴機の稼働率の伸び悩みは)主に国内線ネットワークで運航されていることを明確に示している」とコメント。「国際線の方の成長を可能にするためには、実質的により多くの単通路機、あるいは他の広胴機がフリートに組み入れられ、現在広胴機運航および国内市場にあてがわれているキャパシティを解放できるようにする必要がある」と話した。
ただ、一方で「こうした目先の課題があるにせよ、中国は座席キャパシティ面で今後10年間、世界の増加率を大幅に上回る」ことに触れ、「その伸び率は世界全体の伸び率の1.6倍になる見込みだ」との認識も示した。
C919が中国のフリート倍増計画の鍵の一つに
また、モリス氏は中国が国産で開発した「C919」にも言及。中国がフリートの倍増を目指すなか、「中国商用飛機(COMAC)が開発したC919は、中国系航空会社の今後の成長計画において重要な役割を果たすと期待されている」との見解を示した。
シリウムでは、中国で必要となる新造機のフリートのうち、500機のC919が今後10年間に就航し、新規納入機数の15~20%を占めると予想。モリス氏は「これは重要な数字ではありますが、依然としてエアバスが予想する1500機、ボーイングが予想する800機のそれぞれ納入数を下回っている」とした。
現在、「C919」は中国東方航空が1機のみ商業運航しており、COMACは今年末までに、さらに8機のC919を納入する予定だ。
モリス氏は「エアバスやボーイングがサプライチェーンの問題に直面している今、COMACには市場シェアを拡大するチャンスが到来しているが、それをものにすることができるか否かは、この機会にすぐ実行できればという条件付きだ。既存の有力OEMよりも上手く納入することは難しい」との認識を示した。
※グラフ=好調な国内線の一方で中国発着の国際線の回復は遅い。9月の段階でも48%水準だ(提供:シリウム)