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2023.07.31

【潮流】観光立国目標超える訪日ブーム

 日本政府観光局(JNTO)によると、今年上半期(1-6月)の訪日外国人旅行者数は1071万人と半年間で1000万人を超え、コロナ前水準の64%まで回復した。コロナ前の63%なら訪日旅行者数は2000万人に到達し、既に上半期の時点で2000万人ペースを上回った。どこまで19年水準の3188万人に近づくのか、下半期(7-12月)の訪日外客動向が注目される。
 訪日外国人旅行者数を月別にみると、1月は5t6%だったが、6月には72%と7割を超えてコロナ禍後初めて月間200万人を超えるところまで回復した。下半期も夏休みの旺盛な訪日インバウンド状況を見る限り、7割から8割へと回復が進むことは間違いないだろう。夏休みの後には、秋の紅葉シーズンが控え、秋から冬への動向に注目が集まっている。
 むしろ、中国からの団体旅行が規制されている状況で6〜7割の回復状況であり、下半期のある時期に、中国からの旅行が解禁されれば、一気に19年水準を上回る可能性もある。
 中国を除いた上半期の訪日外国人旅行者数は1012万人で、19年比で84%に達しており、中国以外の訪日外国人旅行者数が今年中にコロナ前水準に達する可能性は十分にある。
 上半期の訪日外国人旅行者数を市場別にみると、人数的には韓国、台湾、香港の貢献が大きい。韓国からは313万人・19年比81%、台湾からは177万人・19年比71%、香港からは91万人・19年比83%だった。
 韓国・台湾・香港は訪日市場の中核を形成しているが、19年比回復率は中国を除く平均回復率84%を下回っており、今後はさらに回復してくるだろう。
 そうした中で、順調な回復ぶりを見せるのが東南アジア、北中米、中東の市場だ。東南アジアは市場によってばらつきはあるが、シンガポール118%、ベトナムは119%と19年水準を上回った。ベトナムは技能実習生の来日が含まれるものの、観光客は増加している。インドネシア、フィリピンも回復率は90%以上で、経済成長、円安と相まって東南アジア市場は今後さらに伸びていくと予想される。
 米国市場は急成長している。日米貿易が拡大して業務渡航が増えていることも背景にあるが、観光客も増加し、上半期は97万人と100万人に迫り、19年比111%とコロナ前の1割以上の過去最高の訪日旅行者数を記録した。6月は23万人で129%とコロナ前を3割近く上回る記録的な増加ぶりだ。
 上半期の米国からの訪日旅行者数は香港、中国を上回り、今や4大市場に匹敵する有力市場の一つとなった。上半期はカナダ99%、メキシコ110.7%と北中米市場が好調に推移、6月は両国ともコロナ前を2割近く上回っている。中東地域も上半期は113%とコロナ前を上回り、ポテンシャルも高く、今後の有望市場の一つだ。
 観光庁が発表した今年4-6月期の訪日外国人旅行消費額は、速報ベースで1兆2052億円だった。これは、19年比で95%の回復に当たる。4-6月期の訪日外国人旅行者数は19年比69%の592万人で、インバウンドは人数ベースではコロナ前7割の回復率だが、消費額ベースでは95%とほぼ回復に近づいた。
 消費額ベースで見れば、台湾1739億円、米国1733億円、中国1515億円、韓国1429億円と続く。4-6月期の中国からの旅行者数は19年比78%減に対して1人当り消費額は51%増に達している。中国の団体旅行が解禁されたら、旅行消費額は記録的に伸びるだろう。その分、オーバーツーリズムの懸念が今のままでは現実になる。
 観光立国推進基本計画の訪日外国人旅行消費額の目標は早期に5兆円だが、上半期の消費額は1次速報で2兆2198億円に達した。この水準からみると、年内達成の可能性もある。2019年の4.8兆円は既に見えている。訪日外国人旅行消費額単価は2025年に20万円が目標、15.9万円が19年実績だが、1-3月は21.2万円、4-6月は20.5万円と既に目標を達成している。
 円安の勢いに乗って、観光立国推進基本計画のインバウンド回復の目標は、消費額と消費額単価は年内にも達成し、人数は来年に1年前倒し、課題は地方への宿泊拡大となるかもしれない。オーバーツーリズムの解決のためにも訪日・国内旅行の地方分散化、平日分散化の推進が早急に求められる。(石原)