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2018.11.13

WING

AGI、民間と防衛で宇宙システムの日本市場へ

米国で積み上げた技術反映、誰もがSSA実施可能に

 今後の日本の防衛における新領域への取組みは、脅威が多様化・深刻化している現在、日本政府として“死活的に重要”とまで位置付けられている。中でも宇宙領域については、近隣国をはじめ各国が衛星による情報収集などの活動を活発化している。さらにそれらの技術・規模とも日進月歩で拡大していることもあって、もはや“待ったなし”の状況だ。防衛省では2019年度概算要求で、厳しい予算環境の中でも、宇宙状況監視(SSA)を含む宇宙関連経費としておよそ925億円を求め、本格的に取り組む構えを示す。こうした日本市場に注目するAnalytical Graphics Inc(AGI)のPaul Graziani(ポール・グラジアーニ)CEOはインタビューを通じ、日本市場へ質の高い宇宙システムを提供していくことに自信を見せた。
 AGIは米国ペンシルバニア州を拠点とする民間企業で、防衛・宇宙システム向けソフトウェア(STK)など汎用製品を提供する。同社のソフトウェアは、米国NASAをはじめ、日本の機関としてJAXA、そのほか欧州宇宙機関(ESA)、フランス国立宇宙研究センター(CNES)など、宇宙・防衛に携わる政府機関や民間企業など、世界中で4万以上の顧客が利用していて、高い信頼性を持つ。
 同社が日本のマーケットに参入したのは約20年前からだが、SSAとしては5年ほど前からTravis Langster(トラビス・ラングスター)バイスプレジデントが活動する。SSAについては、日本において民間と防衛の2つの面で展開していく考えで、ソフトウェアについては特にデータの解析・処理について自信を見せる。光学センサ、レーダ、RFアンテナなど、これらのセンサから得られた情報を解析し、データベース化して処理するという技術で「日本市場の力になれると考えている」と、ポール氏は述べた。
 さらにAGIでは、ComSpOC(Commercial Space Operations Center)というサービスを行っている。これは独自にSSAを行っているセンターになる。このComSpOCの中には、独自に契約したセンサ、望遠鏡、RFアンテナ、レーダも含め、全世界のセンサネットワークから宇宙の情報を取り入れ、独自の処理センタでデータを解析し、データベース化を行っている。これは政府機関が行うような観測とは異なるものだ。例えば、日本の政府・民間の顧客が独自にSSAのセンサを持って、同じような活動を行うときに、このComSpOCの情報を顧客へ渡す、といったデータ提供サービスを展開している。
 このComSpOCのサービスのメリットについて、ポール氏は「仮に経験値が低いとしても、導入することで米国並みの能力を得ることができる」と語る。例えば、民間・政府機関がSSAを開始しようとしたとき、SSAは非常に複雑で、高い経験が必要になるという。ただし、AGIが提供するComSpOCのサービスや様々なソフトウェアによって、すでに蓄積した経験に基づいた情報を提供することになる。かつ、特段に専門のシステムや能力がなくても、すぐにSSAを行うことができるとのこと。

※写真=AGIの創始者でありCEOのポール・グラジアーニ氏(写真右)と、AGIとしてSSAの日本市場を監督するバイスプレジデントのトラビス・ラングスター氏(左)

※画像=ComSpOCのイメージ図(提供:AGI)