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2018.11.19

WING

空飛ぶクルマ実現向け20年代事業化でロードマップ素案

12月策定、「利用」・「体制」・「技術」でアプローチ

 空飛ぶクルマの実現を目指す「空の移動革命に向けた官民協議会」の3回目の会合が11月16日、都内で開かれた。この会合で事務局を務める国側が、今年12月下旬に策定予定のロードマップ素案を提示。この素案では、多くの事業者が試験飛行を開始したいと計画している2019年を皮切りに、2020年代には飛行実証・実証実験に続き、いよいよ事業スタート段階に入ることを明記。そして実用拡大段階の2030年代という形で区切って目標などを明示した。その上で「事業者による利活用の目標」のほか、「制度・体制の整備」、そして「機体や技術開発」について、各年代でそれぞれどのようなことを達成するのか、目標を掲げた。
 このうち利活用目標としては、事業がスタートする2020年代にまずはモノの輸送から始まり、地方における人の移動や娯楽としての飛行が続き、最後にキラーコンテンツとなるであろう都市部における人の移動へと利用を拡大していくと計画した。
 機体メーカーによって急ピッチで空飛ぶクルマの開発が行われている一方で、制度・体制面の整備が果たして追いつくのかという懸念は残る。制度・体制などがきっちりと整備されなければ、せっかく機体を開発したとしても、その利活用はなかなか進まないだろう。そうしている間にも機体開発はもちろん、法制度などで議論を加速している諸外国で続々と様々なサービスが実現し、日本のメーカーが競争力を消失したり、あるいはガラパゴス化する懸念は尽きない。
 そこで今回のロードマップ素案の「体制・制度の整備」には、2019年に試験飛行の許可を明記したほか、試験飛行のための離着陸場所・空域の調整・整備を開始するとしている。並行して、利用者利便のあり方の検討や運送・使用事業の制度整備、さらには技能証明、型式証明、耐空証明などに関する議論をスタートし、20年代に予定されている民間の事業スタート前までに整えることを記した。
 民間による事業がスタートしても、新たなビジネスモデルに応じて運送・使用事業の制度整備を見直すほか、地上からの遠隔操縦、さらには機上やシステムなどによる自律飛行などの技術開発に応じた制度整備を行うことを盛り込んだ。加えて、技術開発に応じた安全性基準・審査方法の見直しなども進めていく。
 技術開発の観点では、2020年代の事業開始前までに、安全性・信頼性を確保するための技術、自動・自律飛行、運航管理、そして電動推進といった技術の開発を進める。こうした技術については、航空機と同レベルの安全性や静粛性を確保することを求める方針だ。
 事業開始後も各種技術に磨きをかけることによって、一部自動操縦段階から、地上からの遠隔操縦、そして機上や地上システムによる自律飛行へと段階的に引き上げていくことを目指す。さらに、電動推進についても、航続距離の向上や静音化技術の開発などを進めていくとしている。

 

※写真=「空の移動革命に向けた官民協議会」の3回目の会合。ロードマップ素案が示された