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2023.11.27

WING

ICAO、国際航空で2030年にCO2排出量5%削減

 CAAF3閉幕、2050実質ゼロへフレームワーク採択

 

 国際民間航空機関(ICAO)が主催して、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されていた「航空及び代替燃料に関する第3回会合(CAAF/3)」が11月24日、閉幕した。
 11月20日から5日間の日程で開催された同会合についてICAOは、「国際航空部門は脱炭素化を加速させるための大きな飛躍を遂げた」と評価。具体的には、持続可能な航空燃料(SAF)、低炭素航空燃料(LCAF)、その他の航空クリーンエネルギーに関するICAOの新たなグローバルフレームワークを採択した。このフレームワークに基づき、ICAOおよびその加盟国は、2030年までに国際航空におけるCO2排出量を5%削減することを努力目標とすることなどに合意した。
 採択したフレームワークは、2022年のICAO総会で採択した2050年までに炭素排出量を実質ゼロにするという目標を達成するために必要な航空部門のクリーンエネルギー移行を後押しするもの。燃料生産者のみならず、公共および民間投資家に着実なシグナルを送るよう設計されているとした。

 

※写真=ドバイで開催されたCAAF/3。グローバルフレームワークに合意した(提供:ICAO)
 ICAOによれば、このフレームワークの主な要素として、クリーンエネルギー移行に向けた共通のビジョン、調和を図った規制基盤、イニシアティブ支援、そしてあらゆる国を取り残すことがないようにするため、資金調達へのアクセス改善などが含まれるとした。
 また、ビジョンの追求にあたっては、排出削減目標という形で具体的な義務やコミットメントを課すことなく、それぞれの国の特別な状況や能力を考慮し、各国の時間枠の中でビジョンに貢献するとした。
 ICAO理事会のサルバトーレ・スキアッキターノ議長は、「フレームワークの役割は、SAF、LCAF、その他の航空クリーンエネルギーの開発・展開を世界規模で促進することであり、航空セクター以外のステークホルダーを含むすべてのステークホルダーに、より明確性、一貫性、予測可能性を提供することである」ことを強調。「投資家、各国政府、その他の関係者は皆、必要な政策、規制、実施支援、投資に関してより確実性を高める必要がある」とコメントした。
 さらにICAOのフアン・カルロス・サラザール事務総長はさらに、「2050年までに炭素排出量を実質排出ゼロにするためには、今後数十年にわたって相当かつ持続的な投資と資金調達が必要となる」ことに言及した。

 

 IATA、「残された時間は少ない」
 SAF生産拡大へ政府は強力に政策推進を

 

 国際航空運送協会(IATA)のウィリー・ウォルシュ事務局長は「各国政府は、2050年までに航空輸送の実質排出ゼロを達成するために、SAFが重要な役割を果たすことを理解している」と前置きしつつ、「CAAF/3では、より短期の2030年という時間軸に野心的なビジョンを追加しており、CAAF/3における合意は、真の進歩を可能にする政策の必要性を、明確な言葉で世界に示したものだ。もう、我々に残された時間は少ない」と警鐘を鳴らし、「IATAは今、各国政府に対し、生産量が飛躍的に増加するグローバルなSAF市場の潜在力を最大限に引き出すため、可能な限り強力な政策を早急に実施することを期待している」と話すなど、SAFの生産拡大に向けた政策を、各国政府が推進していくことに強い期待を寄せた。
 IATAによれば、2050年までに実質排出ゼロにするというコミットメントに沿った航空会社のSAFに対する需要としては、2023年時点において、燃料消費量のわずか0.2%に留まっている。
 2022年に生産されたSAFはすべて購入されたが、SAFの価格はジェット燃料の価格よりかなり割高であって、その調達コストとして業界全体で約5億米ドルの追加コストが発生したという。
 また、航空会社は総額約450億米ドルに相当するSAFの先物購入契約を結んでおり、これは現在のSAFの供給能力をはるかに上回るものとなっていることを明かした。
 ウォルシュ事務局長は「我々は、各国政府がCAAF/3合意に基づき、SAFの生産を拡大する政策について、実際に行動を起こすのかを見る必要がある」とコメント。「明確な需要シグナルが発信されているにも関わらず、SAF生産市場は十分に発展していない」との認識を示し、「世界のあらゆる場所でSAFを必要としている。適切な支援政策、つまり生産を刺激し、競争を促進し、技術革新を促進し、投資を呼び込むことができる政策を、今すぐ実施しなければならない」ことを訴えた。
 IATAのサステナビリティ担当シニアバイスプレジデント兼チーフエコノミストのマリー・オーウェンズ・トムセン氏は「航空業界を変革し、実質排出ゼロを達成するための成功への道は、集団の責任であることを認識すること」であることを強調。「目標は、罰則的な政策措置ではなく、積極的な政策措置によって、あらゆる場所でSAFの生産を最大化すること」との見解を示した。
 その上で、「航空会社におけるSAFの受け入れ準備は整っている。航空会社は脱炭素化の最先端にいるが、航空会社だけで負担することはできない」とし、「CAAF/3は、航空業界の脱炭素化には、バリューチェーン全体と各国政府が一体となり、2050年までの実質排出ゼロを目標に全力を尽くす必要があることを改めて明確にした。はっきり言っておくが、政府の資金がリードするところには、民間の資金もついてくる。政府がその役割を果たすことは絶対不可欠であり、我々もその役割を果たすつもりだ」と述べるなど、政府関係者にSAF政策を強力に推進することを求めた。