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2018.11.26

WING

次期防衛大綱、宇宙・サイバー・電子戦能力強化へ

電子戦はF-15電子戦能力向上やNW戦システム向上など

 政府はこのほど、策定作業を進めている次期防衛大綱において、とくに「宇宙領域における能力」、「サイバー領域における能力」、そして「電磁波領域における能力」の三項目に対する資源配分を優先する方針を固めた。「防衛力」強化にあたって次期防衛大綱では、国の財政状況が厳しい状況にあることや人口減少や少子高齢化の急速な進展を踏まえ、予算・人員を効率的に活用することは必要不可欠だとして、優先すべき分野を早期に強化すべく、資源を柔軟かつ重点的に配分していく。このほど開催した安全保障と防衛力に関する懇談会で明らかにされた。
 新たなビジネスフィールドとして注目されるようになってきた宇宙空間は、安全保障分野でも注目度が高い。人の生活は宇宙インフラへの依存度がますます高まる傾向にあり、今後も加速度的に依存度を高める様相だ。そのため次期防衛大綱では「宇宙領域における能力」を強化して、宇宙空間の安定利用に向けた能力を確保することを盛り込む。
 さらに「サイバー領域における能力」では、サイバー攻撃対処体制の充実・強化を図るほか、「電磁波領域における能力」では、F-15電子戦能力の向上やネットワーク電子戦システムなどの能力を向上していく。
 宇宙・サイバー・電子戦能力の向上に加えて、「従来領域における能力の強化」も進めていく。例えば、スタンド・オフ火力や総合ミサイル防空能力、海空領域における能力、さらには機動・展開能力を強化することも、次期防衛大綱に盛り込む方針だ。
 加えて、弾薬、燃料などの整備・備蓄、運用に係る基盤の分散、装備品の維持整備など、「持続性・強靱性」といった観点から、その能力も強化していく考え。

 

周辺環境のパワーバランスに変化も
ハイブリッド戦など新たな脅威

 

 日本の安全保障環境を取り巻く状況は、刻々と変化している。中国やロシアなどの主要国の影響力の相対的な変化に伴い、これまで地域の安定を支えてきたパワーバランスは変化しつつある。その変化の波は加速化・複雑化の様相を呈していて、政治・経済・軍事に亘る国家間競争が顕在化してきた。さらに、いわゆるグレーゾーン事態は長期化する傾向にあるほか、近年、注目を集めるようになったサイバー攻撃など「ハイブリッド戦」は軍事と非軍事を曖昧化した。また、最先端技術を活用した最新兵器の開発が近隣諸国で進んでおり、軍事力のさらなる強化や軍事活動が活発化する傾向が顕著だ。
 そうしたなか防衛省としても、日本を取り巻く安全保障環境は、現大綱を策定した際に想定したよりも、格段に速い速度で厳しさと不確実性が増大しているとの認識を示しており、脅威が現実化し、国民の命と平和な暮らしが脅かされることを防ぐためには、こうした現実を踏まえた措置を講じることが必要との認識を示している。