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2024.03.29

DXの本質とこれからのビジネス

 

DXは「デジタル前提のビジネス変革」
JATA経営フォーラムでセミナー開催

 日本旅行業協会(JATA)は、「JATA経営フォーラム2024」で「DXの本質とこれからのビジネス」と題したセミナーを開催、講師にネットコマース株式会社代表取締役の斎藤昌義氏(写真)を迎え、昨今関心を集めているDX(デジタルトランスフォーメーション)について論じた。斎藤氏は「デジタル化」との違いを踏まえ、DXについて「デジタルを前提にビジネスを変革すること」と位置付けた。またDXを実践する際には、「自分たちは何を解決したいのか、何をしたいのかをはっきりさせることが大切。デジタルを使うことが目的ではない」と述べ、デジタルを基盤に据えることで社会情勢の変化に迅速に対応できる態勢づくりの重要性を訴えた。

 

 

デジタル化は「デジタルで仕事のやり方を変えること」
データ駆動型の経営基盤で変化に対応

 

 まずデジタル化について、斎藤氏は「デジタルを使って仕事のやり方を変えていくこと」と説明。またその目的として、「効率化」と「新しい価値の創出」の2つを挙げ、効率化については、「どのくらい効率を上げたのか、コストを下げたのか、明確な数値目標があり、既存の業務の中での取り組みとなる」と指摘。一方、「新しい価値の創出」は、「新規事業開発や研究開発投資に近い」とし、「両者を一緒くたにするのではなく、しっかりと分けて取り組む必要がある」と述べた。
 さらにデジタル化によるメリットとして、斎藤氏はデータが手に入る点を挙げ、「データを基盤とした体制とすることで、データにより状況が把握しやすくなる。そのデータを分析し「見える化」することで、課題を見つけ、改善につなげことができる。これを高速に回すことで迅速な変化への対応が可能となる」と述べ、データを循環させるデータ駆動型の経営基盤の重要性を指摘した。

 

 

デジタル化を踏まえた上でのDX
社会情勢の急速な変化に対応

 

 DXを進めるにあたり、斎藤氏は「デジタル化を段階的に踏むプロセスが重要」と説く。デジタル化により「効率化」と「新しい価値の創出」を実現したうえで、「デジタルをしっかり積み上げて実行していくことで、デジタルの価値が分かり、デジタル前提で物事を考えるようになる」とし、業務を遂行する人間自体の変化が必要とのスタンスを示す。
 さらに「デジタル化すれば完了ではなく、働き方や手順、管理、組織体制など、さまざまな仕事の仕組みを変える必要がある」と述べ、DXは単なるデジタル化ではなく、デジタルを基盤としたより大きな枠組みでの変革である点を強調した。
 こうしたDXの必要性が求められる背景には、社会情勢の変化がある。斎藤氏は、ウーバーやエアビーアンドビー、ネットフリックスやスポティファイなど、既にデジタルを基盤とした「デジタルネイティブ企業」の台頭、また新型コロナウイルスの感染拡大、ウクライナやパレスチナでの紛争など、予測困難な社会環境の変化(VUCA)の2点を挙げ、「これからは未来を正確に予測できる能力ではなく、変化に直ちに対応できる能力を持つ必要がある」と指摘。さらに「DXにより圧倒的なスピードで対抗していくことが成功のカギを握る。DXはこの価値観を企業活動の基盤に据えるための取り組みだ」と評した。
 またDXを実践するにあたり、斎藤氏は「デジタルの積極的な活用と当たり前に使いこなす企業文化の醸成が必要」とのスタンスを見せる。
 その一例として挙げたのがAIで、AIに仕事を任せることで、「人間にしかできないことへの時間と意識をシフトさせることができる。AIは人間に求められる重要なスキルになる。DXはこういう企業の文化や風土を作ること」と述べ、その重要性を訴えた。
 他にも「トライ&ラーン」で実践を積み上げることが重要と指摘。さらにDXを実践するうえでの組織体制、人材育成についても触れ、デジタルの知識に限らず、「組織の壁を壊し、経営者のビジョンと現場の業務を同じベクトルにするリーダーシップ」の必要性など、幅広いスキルが求められるとした。

 

 

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