記事検索はこちらで→
2024.09.05

ウイングトラベル

★地域の「観光の足」確保・改善へ、取り組み加速

 国交省、全国58カ所で先行的に対策実施

 

 国土交通省は9月4日に「交通空白」解消本部の第2回会合を開催した。会合では地域や観光の足確保に向けてライドシェアの取り組みに関するこれまでの取り組み状況について報告が行われた。このうち「観光の足」確保に向けた取り組みにおいては、主要鉄道駅、空港、港湾といった「主要交通結節点」のうち全国58カ所について「先行的に解決を図る交通結節点」と位置づけて、ライドシェア活用やタクシーの利用環境改善などの確保などといった具体的な施策が行われていることが紹介された。さらに今回の会合では、いわゆる「日本版ライドシェア」のバージョンアップに向けた第1弾の取りまとめが行われたほか、交通空白解消に向け官民連携のプラットフォームを設置し、より実効性のある取り組みを推進していくことが報告された。

※写真=国交省が開催した「交通空白」解消本部会合の模様(国交省ホームページより)

 

 主要交通結節点のうち149カ所が交通空白に
 観光客にわかりやすい交通手段などが乏しく

 

 「交通空白」解消本部は、全国各地でタクシーやライドシェアなど二次交通を地域住民や来訪者が使えない状況の解消に向けて早急に対応していくことを目的として今年7月に設置されたもの。
 同本部が目指すべき方向性として、「地域の足」対策として、全国の自治体においてタクシー、乗合タクシー、日本版ライドシェアや公共ライドシェアなどを地域住民が利用できる状態を実現すること。そして「観光の足対策」として主要交通結節点において、タクシー等を来訪者が利用できる状態を目指すとした。
 第2回目の会合となった今回では、地域の足対策として、地方運輸局長などが交通空白地帯とされている全国各自治体の首長などに対して集中的な働きかけを実施したほか、タクシー事業者などとの橋渡しを行った。その結果、136の自治体において空白解消の取り組みを新たに実施することが決定。その結果として、空白自治体が5月の624から324まで減少したことが報告された。
 一方、観光の足対策においては、事業者などに対する調査や関係者への聞き取りの結果、主要交通結節点約700カ所のうち、149カ所において「交通空白」にかかる課題があることが判明した。
 観光の足における交通空白の課題としては、交通結節点から利用できるタクシーなどの二次交通の供給が時間帯によって不十分であったり、事前にスマートフォンからの予約ができない点が挙げられた。さらに訪日客を含めた観光客に対して、わかりやすい交通手段やコンテンツを伴う交通サービスが乏しい点などについても課題として指摘された。

※写真=主要駅・空港など国内149カ所で「観光の足」に関する課題が(写真はイメージ)

 

 石垣島や福井・敦賀などで日本版ライドシェア運用開始
 和歌山ではDMOによる周遊観光型の交通サービス導入

 

 そうした中で国交省は149カ所のうち58カ所について「先行的に解決を図る交通結節点」として位置付けて対応を開始した。
 58カ所の対応手法においては、3つの類型で対応する。22カ所においては「日本版/公共ライドシェアの導入・導入に向けた検討」(類型1)を実施する。また、18カ所では「乗合タクシーの導入やタクシーの利用環境改善を実施・実施に向けた検討」(類型2)を行う。残りの18カ所については「鉄道事業者、航空会社、観光事業者による二次交通サービスを導入。または導入に向けた検討」(類型3)を展開する。
 各類型における具体的な取り組みとしては、類型1では、沖縄県の石垣島において8月16日から日本版ライドシェアの運用を開始。クルーズ船到着時などの二次交通需要などへの対応策として期待されている。また、福井県敦賀市では8月30日から日本版ライドシェアの運用が始まった。敦賀では北陸新幹線開業を契機とした観光客の移動需要に対応することが期待されるとした。
 類型2においては、秋田県の角館駅において、観光スポットや宿泊施設・飲食店などを巡ることができる乗合オンデマンド交通の実証運行がスタート。山梨県の河口湖駅を含む富士山周辺エリアの6市町村で8月からタクシー配車アプリ「GO」のサービスが開始。訪日外国人旅行者を含む多くの観光客が利用しているという。
 類型3については和歌山県の白浜エリアにおいて白浜駅、南紀白浜空港や主要観光施設など20カ所を結ぶオンデマンドバスを10月から来年2月にかけて実証運行を行う。また、紀の川市の貴志駅では、地域DMOの紀の川フルーツ観光局が実施主体となり、果物の収穫体験ができる農園や飲食店、直売所を巡る通訳ガイド付き交通サービス「ホッピンキノカワ」の運行が行われ、鉄道駅を起点とした周遊観光の促進を図っていることが紹介された。

※図=主要交通結節点58カ所で先行施策を展開(国交省資料より)

 

 交通空白解消へ官民連携プラットフォーム設置
 ソリューションのマッチングや先導的な取り組み推進

 

 また、今回の会議では交通空白の解消加速に向けて、自治体・交通事業者等とさまざまな技術・サービスを持つ企業群との幅広い連携を図るため「交通空白解消・官民連携プラットフォーム(仮称)」を年内をめどに設置する方針が示された。
 プラットフォームを通して、交通空白に関する課題を解決したい自治体や交通事業者と技術やノウハウなどのソリューションを持つパートナー企業とのマッチングを後押しする。また、交通空白を解決する先導的・連鎖的な取り組みを「パイロットプロジェクト」として推進していく。さらに、空白解消に向けたタクシー、乗合タクシー、公共/日本版ライドシェアなどの普及促進に向けた官民の意見交換会の実施などに取り組んでいくとしている。