ウイングトラベル
★ボーイング、従業員10%削減、50億ドル追加費用計上
事業の選択と集中、防衛宇宙・安全保障部門の監督強化
ボーイングのケリー・オルトバーグ社長兼最高経営責任者(CEO)は10月11日(、「今後数カ月の間に、総従業員数(約17万人)の約10%削減する」ことを表明。さらに、777X初号機の引き渡しスケジュールを2026年に後ろ倒しするほか、民間機としての767貨物機の生産を終了することなどを決定し、これに伴って50億ドル(うち民間航空機部門:30億ドル、防衛宇宙・安全保障部門:20億ドル)の追加費用を計上した。
民間航空機部門で計上した30億ドルのうち、26億ドルが777Xの納入後ろ倒しとストライキの発生によるもの。残る4億ドルは、767貨物機の生産終了と同プログラムにおけるストライキの影響を反映した。
一方、防衛宇宙・安全保障部門では、T-7A、KC-46A、スターライナー、MQ-25関連の費用を追加計上した。このうちT-7Aは9億ドルの費用を計上。2026年以降の生産契約における見積もりコストの増加を反映。KC-46Aは7億ドルを費用計上し、767貨物機の生産終了とストライキ影響などを考慮した。
ボーイングは同日、第3四半期(7-9月)の業績見通しを発表。売上高が178億ドル、GAAPベースの1株当たり損失が9.97ドル、営業キャッシュフローは13億ドルのマイナスを見込むとした。当四半期末時点における現金および有価証券投資の総額は105億ドルとなるとしている。民間航空機部門および防衛宇宙・安全保障部門で一部プログラムの追加費用計上と、国際機械工労働組合(IAM)によるストライキ発生が業績に大きな影響を及ぼしたとしたと説明した。
そうしたなかオルトバーグCEOは、財務状態の悪化に歯止めがかからず、大規模な人員削減という大鉈を振るうことを決定。「この人員削減には幹部、管理職、従業員が対象となる」とするなど、全レイヤーを対象とした人員削減を行うとした。今週中にもリーダーシップ・チームが、より詳細な情報を従業員と共有することを明かした。
オルトバーグCEOは「我々の事業は困難な状況にあり、共に直面する課題を誇張することは難しい」とコメント。「現在の苦境を乗り切るだけでなく、会社を立て直すには厳しい決断が必要であり、長期にわたって競争力を維持し、顧客にサービスを提供できるようにするためには、構造改革を行わなければならない」と説明。「我々は直面する仕事に明確な目を持ち、回復への道のりで重要なマイルストーンを達成するために要する時間を現実的に考える必要がある。さらに、業績不振や投資不足を招きがちな多くの取り組みにリソースを分散させるのではなく、我々らしさの核となる分野で業績と革新にリソースを集中させる必要がある」として、事業の選択と集中を進めていく考えを示した。
777-9納入は26年、777-8貨物機納入は28年開始
767貨物機生産終了、KC-46Aは生産継続
従業員の大規模削減に加え、各プログラムの見直しも進める。民間航空機部門では、飛行試験中に問題が発覚したことを受け、足下で飛行試験が中断していることを踏まえ、同機の顧客に対する引き渡し時期を2026年に後ろ倒しすることを決定した。具体的には777-9型機の初号機納入を2026年に、777-8型貨物機の初号機引き渡しを2028年とする。
さらに、767貨物機は2027年に民間機としての生産を終了することを決めた。ただし、同機をベースとした軍用機のKC-46Aの生産は継続する。
オルトバーグCEOは「固定価格制の開発プログラムにおける当社の業績は、必要な水準に達していない」ことを指摘。「民間機の派生機の作業停止、継続的なプログラムの課題、767貨物機の生産終了の決定により、今期は大幅な損失が新たに発生する見込みだ」とし、「私は、この事業とこれらのプログラムに対する監視を強化する」ことを表明した。
また、「当社の事業は短期的な課題に直面している」と前置きしつつも、「既に将来に向けて重要な戦略的決定を下しており、業績を回復するために成すべき仕事について明確な見解を持っている」とコメント。その上で、「(人員削減などの)これらの断固たる行動は、事業の重要な構造改革とともに、長期的に競争力を維持するために必要だ」とし、「当社の将来にとって重要な分野に注力し、投資、従業員支援、顧客への貢献に必要なバランスシートを確保する」とした。
※写真=ボーイングが1万7千名規模の人員削減。ストなどが影響し50億ドルの追加費用も