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ボーイング、名古屋研究開発拠点で複数プロジェクト
持続可能な航空の未来向けた技術開発、日・ボーイング協力深化の鍵
ボーイングは今年4月18日、名古屋に研究開発の拠点となる「ボーイングジャパン リサーチセンター」(以下:BR&Tジャパン、愛知県名古屋市中村区名古屋三井ビルディング北館16階)を開設した。
同センターでは日本の強みを活かした研究開発を進めるほか、設計製造に採り入れるモデルベースエンジニアリング(MBE)や製造技術、そして持続可能な航空燃料(SAF)などの研究開発を推進し、次世代機や持続可能な航空の未来に寄与する様々な研究開発を、日本の企業・大学、研究機関などと協力して推進する。
同センターは日本企業・研究機関などと協力して研究開発を推進することのほか、大きな特長の一つがロボティックスラボスペースを整備している点だ。このスペースに3Dプリンターなどの装置を設置し、その場で航空機整備や製造にロボティクス活用を深化させる研究開発も進めていく。
ボーイングは「ボーイング研究開発センター」(BR&T)を、2002年に欧州(マドリード)に設置したことを皮切りに、2008年に豪州(メルボルン、ブリスベン)、2009年には中国(北京)とインド(バンガロール)に、14年にブラジル(サン・ホセ・ドス・カンポス)に開設。その後、16年に欧州(ミュンヘン、シェフィールド)の拠点を拡充し、そして2019年には韓国(ソウル)に開設。ほかに米国内にも5カ所のBR&Tを整備済みだ。
そうしたなか去る2022年8月、ボーイングは名古屋にBR&Tを開設することを表明。この一環として、去る2019年に経済産業省との間で締結した「将来の航空機の技術協力に係る合意書」の延長にも合意。当時の萩生田光一経産相が駆け付け、ボーイングのチーフ・エンジニア兼エンジニアリング・テスト&テクノロジー担当でエグゼクティブ・バイス・プレジデントを務めていたグレッグ・ハイスロップ氏との間で調印を交わした。
将来機の開発に向けて日本とボーイングの協力深化しつつあるなか、その鍵を握るBR&Tジャパンの活動について、同センターを統括するディラン・ジョーンズ氏(エグゼクティブディレクター)が本紙の取材に文書で回答した。
ジョーンズ氏は「BR&Tジャパンには現在、およそ30名のスタッフが在籍しており、このチームは10カ国以上の国籍から成る、まさにグローバルチーム」であることに触れつつ、「ボーイングはBR&Tジャパンとの協力関係やパートナーの拡大に伴い、BR&Tジャパンのスタッフの更なる拡充を目指す」とし、まずは約50名体制まで拡大することを目指す方針だ。
ボーイングがBR&Tの新たな拠点として名古屋に白羽の矢を立てた理由について「BR&Tジャパンの拠点として名古屋を選んだのは自然な成り行きだった」と振り返った。その上で「長年にわたり高い評価を得ている日本のパートナーに近い。我々は50年以上にわたり、名古屋とその近郊の日本企業とともに民間機(767、787、777)や防衛機(F-15、CH-47、AH-64)を製造してきた」ことに言及。さらに「名古屋のある愛知県は日本の主要な工業・製造拠点であって、かつ我々は名古屋大学と密接に協力し、科学と物理学の分野で6名のノーベル賞受賞者を輩出した人材パイプラインを開発・活用できるようにしてきた」とするなど、日本におけるBR&Tの拠点に名古屋を選んだ理由を説明した。
※この記事の概要
・複合材やエネルギー、ロボットなど注力
4月の設立以降、プロジェクトも始動
・韓国研究開発拠点、実績積上げ5年で100名体制
AIやAR、スマートファクトリーなど研究開発
・内装品展示会で客室用の有機LEDパネル開発
湾曲面にも適合、メッセージや機内販売表示も
・日本のパートナーと世界に有意義なインパクトを
持続可能な航空宇宙の未来を共に創る など