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2024.10.17

WING

日エアバス連携深掘り、「エアバス・テックハブ・ジャパン」始動

 新型機供給網参画の好機、脱炭素・新素材・自動化3分野注目

 エアバスは今年5月、フランスパリで開催された「ビバ・テクノロジー2024」において、「エアバス・テックハブ・ジャパン」を都内に発足することを表明した。脱炭素、新素材、自動化の3分野を中心に、次世代機に向けた新技術・イノベーティブなソリューションを発掘することを目指す。
 エアバスはシンガポール、オランダに続き、世界で3番目の「エアバス・テックハブ」拠点として、日本に白羽の矢を立てた。すなわちエアバスが次世代機開発において、日本の技術・ノウハウに大きな期待を寄せていることを、あらためて浮き彫りにするものとなった。
日本の従来の航空機産業、とりわけ機体構造に限っていえば、“米国一本足打法”だ。ボーイングとの蜜月を築くことで、ワークシェアを着実に伸ばすことに成功し、確かに上昇気流に乗ってきた。ところが今、その航空機産業戦略には大きな転換期が訪れている。コロナ禍やボーイングの品質問題の影響を受け、日本の航空機産業の脆さが露呈したためだ。
 かつてA380プログラムがローンチされようとしていた時、エアバスは日本側に10%のワークシェアを提示した。ところがボーイングプログラムへの対応や防衛省機開発などでリソースを割かれていた日本側は、その要求に応えることができなかった。
 エアバスノースアジア地域代表兼エアバス・ジャパン社長のステファン・ジヌー社長は、従前から日本の航空機産業との結び付きの更なる強化を自身の重要ミッションとして課してきており、新たにスタートした「エアバス・テックハブ・ジャパン」を通じ、日本の産業界との結び付き強化に向けて更なる攻勢に打って出た。
 エアバスは2035年頃をターゲットに新たな新型機を就航させようとしている。その新型機のグローバル・サプライチェーンに食い込むことができるのか―――。エアバスは「エアバス・テックハブ・ジャパン」を発足させて、日本の技術・ノウハウに光を当てている。日本の産業界はそのエアバスの期待に応えて協業を拡大することができるか。「エアバス・テックハブ・ジャパン」を通じた今後の数年間の取組みが勝負だ。
 本紙の取材に応じたジヌー社長は「エアバス・テックハブ・ジャパン」の役割について、「日本にある様々な新技術、ノウハウに関する情報収集を行いつつ、日本のスタートアップ企業から大企業に至るまで、我々と上手く連携する仕組みづくりを行うこと。その上で我々と一緒に、その次世代機を生み出すことにある」ことに言及。日本を「エアバス・テックハブ」の世界3番目の拠点としたことについて、「冷静かつ緻密な分析を重ね、日本を選んだ。(日本に拠点を設けることに)誰も反対する者はいなかったし、我々にとって、日本は最適なパートナーになると信じている」と話した。
 エアバスは「エアバス・テックハブ」発足以前から、日本市場において個別に共同プロジェクトを走らせてきた経緯はあるが、既存および今後立ち上がるプロジェクトを含め、「エアバス・テックハブ・ジャパン」の下に統合する。
 ジヌー社長は「我々は日本市場において、様々なプレイヤーと産官学連携を進めてきたが、一方でより集中的に情報収集し、本社に伝達していくことによって日本とエアバスの連携を深掘りしていきたい」と述べるなど、「エアバス・テックハブ・ジャパン」を日本とエアバス本社を繋ぐ“橋渡し役”としていく機能させていく方針だ。
「現在、世界的に航空業界はサステナビリティ(持続可能性)、脱炭素化などといった共通ニーズが存在する。機体メーカーであるエアバスとしても、同じ目標に向かって歩みを進めており、そこに日本のインテリジェンスを活かしていきたい」とした。
 その上で「本社が求める技術とソリューションを、日本市場からテックハブを通じて発掘していくことはもちろん、日本から優れたアイデアを本社に情報発信し、ひいてはプロジェクト化するケースもあるだろう」とし、本社サイドの要求に応えるのみならず、日本の優れた技術・イノベーションを、本社に発信していく構えだ。

※この記事の概要
・日本市場から年18億ドル調達
 日エアバス連携に追い風
・新素材・脱炭素・自動化を主テーマに

 SAFや水素、超電導配電技術など
新素材・脱炭素・自動化を主テーマに
 SAFや水素、超電導配電技術など