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2024.11.08

ウイングトラベル

★WTTC、西豪パースでグローバル・サミット開催

 先住民観光など、持続可能な未来について提言

 

 世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)はこのほど、オーストラリアのパースで「第24回グローバル・サミット」を開催した。今回は70カ国以上から代表団やメディアが集まり「古来の土地、新たな視点」をテーマに、再生型観光(リジェネラティブ・ツーリズム)の要となる先住民観光など、持続可能な未来について議論、提言を行った。
 基調講演では、WTTCのジュリア・シンプソン会長兼CEOが「西オーストラリア州は、先住民アボリジナルのコミュニティが自分たちの6万年の歴史を持つ文化や物語を共有することで、旅行者の体験を豊かにすると同時に、持続可能な観光の機会を生み出すという輝かしい模範例となっている」と述べた。
 さらに「パースは、オーストラリアへの単なる玄関口ではなく、旅行/観光産業の未来をリードしている」とし、先住民アボリジナルが残した文化と深くつながり、観光イノベーションの世界的な拠点として現代的な役割を果たす西オーストラリア州のパースでサミットを開催する意義と先住民観光の重要性を強調した。
 サミット内で行われた「グローバル・リーダーズ・ダイアローグ」では官民から25カ国以上のリーダーが一堂に会し、ツーリズムの持続可能な長期的成長戦略について議論が交わされた。
 この中で、開催地である西オーストラリア州のリタ・サフィオティ副首相兼観光大臣は「すべての国にとって、観光産業は経済成長の重要な柱のひとつ。観光産業には持続可能な成長とインパクトをもたらす多くの機会があり、西オーストラリア州はその将来において重要な役割を果たすことができる非常に恵まれた環境にある」とアピールした。

 

 先住民観光、670億米ドルの経済効果
 拡大する西豪州のアボリジナル・ツーリズム

 

 今回のグローバル・サミットでWTTCは最新の報告書を発表した。それによると、先住民観光が2034年までに年平均で4.1%成長し、670億米ドルの経済効果をもたらすとの予測を明らかにした。
 先住民観光は、先住民の文化や言語、土地を保護するだけでなく、歴史や伝統の体験を観光客に提供、地域の雇用や新たな経済的価値をもたらすものとして位置づけており「地域社会が自ら経済的未来を切り拓く力を得られる」点で重要としている。
 なかでも西オーストラリア州では、2023〜2024年に西オーストラリア州を訪れた旅行者の87%がアボリジナル・ツーリズムに興味を持ち、36%が実際に参加した。アボリジナル観光事業の経済貢献は向上し続けており、2021〜2022年で州総生産に対し6380万豪ドルの貢献に達したという。
 同州で先住民観光を推進する西オーストラリア先住民観光事業者協議会(WAITOC)は、西オーストラリア州政府観光局と協働し、同州におけるアボリジナル観光の継続的発展を支援するため、「西オーストラリア州先住民観光アクション・プラン2021-2025」を策定、新規事業の支援などに努める。 WAITOCのロバート・テイラーCEOは「西オーストラリア州は、アボリジナルの文化体験ができる国内随一の観光地となることを目指している」と強調した。
 具体的には、オーストラリア初のプログラムとして、伝統的なアボリジナルの所有地に宿泊施設を含むキャンプ場の開発を進めており、今年5月には北部ブルームの北に位置するダンピア半島のロンバディナに7番目のキャンプ場がオープンした。
 これらのキャンプ場は、アボリジナル・コミュニティによって所有、運営されており、資金と雇用の機会をもたらしているという。

 

 旅行/観光に関わるCO2排出量が減少
 ビジネス旅行はコロナ前超えを予測

 

 ほかにも今回のサミットでは最新の環境社会調査データの発表が行われた。
 2023年は旅行/観光業が世界のCO2排出量の6.7%を占め、ピークだった2019年の7.8%から1.1ポイント減少した。またCO2排出量自体も2019年のピークを12%下回り、GDPあたりの排出量も8.4%低下した。
 その一方で旅行/観光業における世界GDPへの貢献は、9.9兆米ドルに達し、コロナ前の水準にほぼ回復しており、旅行/観光業が環境に配慮しながら成長していることを示した。
 また旅行/観光業における化石燃料エネルギー源(石油、石炭、天然ガス)への依存度は、2019年の90%から2023年には88.2%に低下した。これに対して低炭素エネルギー源(原子力、再生可能エネルギー)のシェアは、2019年の5.1%から5.9%まで増加した。
 一方、ビジネス旅行は2024年にコロナ前の水準を超え、過去最高の1兆5000億米ドルに達する見通しであると指摘した。
 ビジネス旅行は、従来予測を上回るスピードの回復を見せており、コロナの影響でリモートワークが台頭したものの、対面交流の重要性が再認識されたことで、ビジネス旅行が復活、コロナ前の2019年を6.2%上回る成長を見せるとした。

※写真=西オーストラリア州パースで開催されたWTTCグローバル・サミットの模様