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イプシロン第2段モータ、燃焼試験開始49秒で爆発
燃焼圧力が予測からズレ、耐圧許容範囲内も爆発
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月26日、既報の通り種子島宇宙センターの竹崎地上燃焼試験場の固体ロケット試験場において、昨年7月の能代試験場に続き、2度目の「イプシロンS」ロケットの第2段モータの地上燃焼試験を実施したが、燃焼試験開始49秒後に爆発した。
爆発によって第2段モータの部品が周囲に飛散したほか、試験に活用した固体ロケット試験場にも相当程度の被害が発生している様相。同施設は「H3」ロケットの固体ロケットブースタ(SRB-3)の地上燃焼試験を行っている設備で、モニター越しにみてもクレーンなどが損傷していることが分かっているほか、爆風を受けて扉が凹んでいることから、JAXA側もかなりの損傷を受けていると推定した。今後の現場検証などの結果によるが、施設の復旧だけでも少なくとも数カ月程度の時を費やす見通しだ。
爆発に至った原因究明などは今後の詳細な解析を待つことになるほか、三度、第2段モータの地上燃焼試験を実施しなければならないことなどを考慮すると、今年度中に打ち上げを予定していた「イプシロンS」実証機(イプシロン7号機)の打ち上げは、限りなく厳しい状況となった。
同日午後、記者会見に臨んだJAXA宇宙輸送技術部門イプシロンロケットプロジェクトマネージャの井元隆行氏は「(昨年の能代試験場における爆発後)力を尽くして原因究明を行ってきたが、このような事態となり残念。皆さんの期待に応えることができなかったことを申し訳なく思う」とコメント。「フライトを行う前に地上で(問題が)見つかったことは不幸朝の幸いと受け止め、失敗から学ぶこともあるだろうから、よりロバストなロケットにしていきたい」と話すなど、再び原因究明と対策を講じる事で、「イプシロン」ロケットをより信頼性の高いロケットに作り上げていくことなどを誓った。
なお、イプシロンS実証機の打ち上げ時期については「現時点では何とも言えない。速やかに明確にしていきたい」とコメント。同機に搭載する予定のベトナムの地球観測衛星「LOTUSat-1」(ロータスサット・ワン)への影響のほか、その後の「革新的衛星技術実証4号機のスケジュールにも影響が生じる可能性がある。
※写真=竹崎地上燃焼試験場における再地上燃焼試験で爆発するイプシロンS第2段モータ(提供:JAXA)
※この記事の概要
・前回と共通点は10~20秒で燃焼圧力が計画値から乖離
設計耐圧より低くても爆発するのは何故か など