記事検索はこちらで→
2019.01.17

WING

失速繋がる脅威、着氷をハイブリッド防除氷技術で防げ!

超撥水コーティングは実用段階に
 
 今年は年始から冬将軍が猛威を振るった影響で、北の玄関口・新千歳空港が大混乱になったことは記憶に新しい。冬の航空機の運航は、冬季特有の気象現象が航空機運航の安全性や効率性に影響を与えるため、エアラインにとって課題。なかでも航空機の着氷現象は空力性能の低下のみならず、時に失速に繋がりかねないなど、航空史のはじまり以来、変わらずに大きな脅威だ。そうしたなか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)やSUBARU、神奈川工科大学などが研究開発を進めたコーティング技術が、開発フェーズからいよいよ商用フェーズへと入る。JAXAで長らくコーティング技術の研究開発に携わった守田克彰氏が日本ペイントホールディングス傘下の日本ペイント・サーフケミカルズに入社して、いよいよ商用フェーズへと入る。
 単に氷が翼に付着したと侮るなかれ、1994年にはアメリカン・イーグルのATR72型機が墜落する事故が発生するなど、着氷現象は大事故を引き起こす大きな脅威だ。この事故は、同機の防氷装置に設計上の問題があったことで除氷することができず、エルロンによる機体コントロールを行うことができなくなったことが原因で、空中を浮遊する過冷却水滴が引き金となった。この過冷却水滴とは、飛行中の航空機が衝突した衝撃によって凍るという特性を有する。
 翼面上に着氷すると、氷の影響で翼の翼面上の最大揚力の減少や操縦性の低下、抗力の増大などを引き起こしてしまう。薄い着雪氷であっても、実に30%まで揚力が減少し、40%までの抗力増加を引き起こすとされ、厚く着雪氷したならば更なる揚力の低下と抗力も80%以上増加するケースも確認されたという。
 機体の着氷防止には周知の通り、ブリードエア、電熱ヒーターを活用しているほか、地上でも防除氷液の散布することが基本的な対策だ。こうした技術は1920年代から”ドイツ式”として適用がスタートし、基本的には未だに100年前の技術を利用しているといえる。
 電熱ヒーターなどの機械を活用した着氷防止を利用するために、メンテナンスを欠かすことができない。一方、ブリードエアの利用では燃費効率の低下などの課題を抱えている。一方、地上の防除氷液の散布では、環境への影響を懸念する声も聴こえてくる。そのため航空業界は長らく、より安全かつ省エネルギーな防除氷システムの登場を待ち望んでいるところ。

 

日欧共同で研究スタート
着氷減や省電効果も

 

日本独自の「ICE-WIPS」プロジェクト
研究深化でヒーター電力70%減と同等効果

 

※画像=JAXAが航空気象防御技術の研究開発で産官連携で開発に取り組んでいる。着氷防止技術もその一環だ(提供:JAXA)