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2018.04.19

WING

MRJ水谷社長「2020年半ばギリギリ守れる」

TC飛行試験未だ実施至らず、「全体レベルを当局が評価」

 「昨年来、お約束している初回納入スケジュールである2020年半ばを、ギリギリ守ることができるという認識で、作業に勤しんでいる。」−−−−−−。4月18日に会見に臨んだ三菱航空機の水谷久和社長は、従来通りこう話した。三菱航空機がエアラインらと交わしたこの約束事の期限が日々着々と近づきつつある一方、MRJは未だ型式証明試験(TCフライト)の実施には至っていないことが実情だ。水谷社長は「TCフライトを実施するためには、航空局、それから米連邦航空局(FAA)の理解・承認があって実施することができる。我々なりに開発作業を進めながら、当局に説明をしているが、まだ最終的な理解を得るには至っていない」とのことだ。一体なぜ、TCフライトに入ることができないのか。
 水谷社長によれば、米国における社内飛行試験は18日朝(日本時間)の段階で、1900時間前後に達したとのこと。現在、米国では4機体制で社内飛行試験が実施されている。1月にはアリゾナ州で高地試験を実施するなど、飛行試験を重ねている状態だ。それでもまだ、FAAやJCABら当局からのTCフライト実施許可は降りない。
 水谷社長は「何か特定の項目をクリアすればTCフライトを実施することができるというわけではない。あくまでも開発作業全体のレベルを最終的に評価されるもの。その意味では民間機に初めて参画している会社が、どのようなレベルに達しているのか、航空局を通して、FAAもみている」と説明する。つまり、FAAら当局からするとMRJプログラム全体が、未だTCフライトを実施できる段階には到達していない、という判断なのだろう。
 一方で「昨年の状態に比べれば、FAAからみても、かなりMRJ開発の成熟の仕方が、それなりにレベルが上がってきているという感触を得ている」とのこと。三菱航空機としても航空局のTCセンター、本省などと情報共有を進めており、「皆様にも状況をご理解頂いている」様相だ。
 具体的にいつからTCフライトを実施することができるのか。「私たちから申し上げられない」(水谷社長)とのことで、「ご説明をさせて頂いて、早く当局のご理解を得たい。開発作業の熟し方、レベルの向上で判断されるため、そこに如何に到達することができるのかということ」だという。
 「我々の心づもりとしても今日明日にも実施というわけではないという状況を踏まえて、なおかつまだギリギリ2020年半ばを守ることができると思っている。この二年半弱、このなかで試験も含めて我々なりにやりくりを重ねており、何とか頑張ればまだ、達成できるところに2020年半ばというスケジュールはあると思う」との認識を示した。
 ”これをクリアすればTCフライト実施”という具体的なチェックリストがあるわけではないだけに、何ともすっきりしない歯がゆさを感じるところがあるが、一方で着実に”2020年半ば”というデッドラインが迫ってきている。このスケジュールを遵守するためのTCフライト開始というマイルストーンのデッドラインの足音も、迫ってきていることは間違いない。

 

※写真=「2020年半ばをギリギリ守ることができる」と話す水谷久和社長

 

※写真=米国モーゼスレークの空を飛ぶMRJ。未だTC試験には至らず(提供:三菱航空機)