ポスト団塊・バブル世代を攻めろ!
若者のアウトバウンド活性化は政府の観光ビジョンにも明記され、JATA(日本旅行業協会)、アウトバウンド促進協議会を中心に促進事業に取り組んでいる。
ただ、法務省の出入国管理統計を見ると、20〜29歳の出国率は2012年の22.8%から2017年は24.3%に上がっており、とくに女性は女子旅の好調さもあって29.5%から31.2%と高まった。また、10〜19歳も2012年の7.6%から17年は9.0%、ここも女子は8.8%から10.6%に伸びている。
人口自体が減少しているので、若者の旅行が減っているように感じられるが、出国率は伸びており、若者が海外に行かないわけでないことは出国率を見ると分かる。
そうした状況下で、旅行産業界に最も大きな課題はシニア層をどのように取り込むかだろう。とくに、団塊世代(68〜72歳)が70歳前後に差し掛かり、その前のポスト団塊世代(59〜67歳)とバブル世代(48〜58歳)がシニアの中心になると、海外旅行市場の形態が大きく変わる予感がする。
パッケージツアーの送り手と受け手の中心は団塊世代以上の人々だった。この世代の人達がパッケージツアーの隆盛をつくったと言っても過言ではない。それに対して、ポスト団塊世代は個人旅行が始まった世代であり、ここがパッケージツアーとFITの世代分岐と見る。したがって、ポスト団塊世代に訴求するパッケージツアーは、相当深掘りした商品でないと受け入れが難しいのではないかと思う。
JTB総研の調査による「海外観光旅行の現状 2018」では、団塊世代は「海外旅行の回数を減らす、今後はいかない」が増加し、その上の73歳以上の世代は7割以上が海外旅行からの「卒業」に向かっているという。
海外旅行商品の予約・購入は、60〜79歳でもウェブサイトからの購入が5割を超える。その中で、旅行会社ウェブサイトが3割弱と最も多いが、60歳に近いほどOTAの比率が高まる。50代以下では、旅行会社サイトとOTAの比率は逆転する。
JTB総研は、「ポスト団塊世代やバブル世代は、退職や子離れなどを期に、海外旅行を増やしたいという意識が高く、海外旅行の世代交代が進んでいる」と結論づけている。
旅行産業界として、最も重要な50〜79歳のシニア層に対して、どのようにアプローチしていくかが最も重要な課題となる。
ソニー生命保険がまとめた「シニアの生活意識調査2018」によると、全国のシニア(50〜79歳)の最大の楽しみは「旅行」がダントツの1位で、48%と半分近くを占め、とくに女性は49%に達した。また、孫がいるシニアのお金の使いみちでは、「一緒に旅行・レジャー」が3割に増え、孫と旅行を楽しむシニアが増えているという。
男女別だと女性の方が「楽しみ方」の比率が高く、旅行、グルメ、健康づくり、子供・孫との過ごし方、オシャレなど時間を有効に使っている。それに対して、男性は過ごし方に開拓の余地がありそうだ。ちなみに、男性が女性よりも高い「楽しみ方」は、「映画」「音楽・楽器」「スポーツ」で、趣味やマニアックの世界では男性が高い傾向にある。
孫がいるシニアで孫の「世話をしたい」人は29%、「世話をしたくない人」は48%に上り、お金を出して孫と旅行や外食をして遊びたいが、世話は子供夫婦に任せるというのが、最近の傾向で、要するに「孫の世話はしたくないが、一緒に旅行したい」のだ。
それに加えて、学習意欲が旺盛で、学び直して「教養を高めたい」57%、「趣味を深めたい」52%と5割を超える。
ポスト団塊世代とバブル世代は、海外旅行意欲が旺盛だ。孫と行く旅行には金を惜しまない。孫と行くなら安全第一の旅行が最優先される。また、語学や歴史などの教養が高まる、深まる旅行がしたいのだ。これこそ、旅行会社の出番ではないか。(石原)