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2018.12.10

グレート・ベイ・エリアの観光開発

 港珠澳大橋の開通で、広東・香港・マカオを含む「グレート・ベイ・エリア」の開発に注目が集まっている。既に、経済・貿易、観光関係者はもとより、開通した10月24日以降に橋を渡るツアーも催行され、日本からの旅行者も橋の通行を「体験」し始めている。
 中国政府はグレート・ベイ・エリア(粤港澳大湾区)について、ニューヨーク、サンフランシスコ、そして東京湾のベイエリアを参考に、広東省の都市と香港、マカオを1つの地域とする経済圏を計画している。
 港珠澳大橋を渡るための両脇にある香港口岸とマカオ口岸(ターミナル)を見ると、「一国二制度」の中で、ヒト・モノ・カネを迅速に、効率的に動かし、グレート・ベイ・エリアの開発を中国・香港・マカオの成長エンジンにしていく構想のようだ。
 これまでの中国本土の地域開発とは違い、グレート・ベイ・エリアは中国本土に香港、マカオが含まれる一大エリアだけに、習熟に時間が掛かるのは容易に察しがつく。マカオ政府観光局では、個人旅行はともかくとして、団体旅行がユーザーフレンドリーになるには時間を要するとしているが、慣熟すれば、利便性は格段に向上するだろう。
 中国政府は日本の国会に当たる全人代で中国を「観光強国」とすることを謳い、マカオを世界的な観光レジャーセンターに、香港を経済・貿易センターとして成長させるとしている。これは、グレート・ベイ・エリアにおけるマカオは観光のゲートウェイ、香港は経済・貿易のゲートウェイの位置づけと解釈できる。
 毎年、マカオで「グローバル・ツーリズム・エコノミー・フォーラム」が開催され、世界中のツーリズム関係者が参集するのも、中国全体におけるマカオのポジションを表しているといえる。
 先だって開催されたマカオ・マーケティング・セミナーでは、香港から港珠澳大橋を渡ってマカオへ、そして中国本土の広東省への「観光圏」の市場拡大が示された。とくに、セミナーでは、マカオと親和性の高いユネスコ世界遺産の広東省開平とユネスコ食文化創造都市の広東省順徳が紹介され、マカオと組み合わせた旅行商品の企画造成の可能性が指摘された。
 来賓として挨拶した日本旅行業協会(JATA)の坂巻伸昭副会長(東武トップツアーズ社長)は、「世界最長の港珠澳大橋は、橋自体が観光素材として素晴らしいものだが、それ以上に今までの都市型、点の観光だったマカオが、点から線に繋がり、そして面の広域な観光エリアとして、新しいマカオはより大きな観光素材になる」と指摘した。
 その上で、坂巻JATA副会長は、旅行業界の取り組みとして、グレート・ベイ・エリア全体の観光拡大に寄与する旅行商品の造成を提言した。日本各地の空港から香港国際空港→港珠澳大橋→マカオへ。そしてマカオを起点に、広東省グレート・ベイ・エリア広域観光圏全体に市場が拡大する。
 広東省は開平、順徳以外にも魅力的な観光素材が眠っている。それらを磨き上げることが旅行業界の仕事だ。グレート・ベイ・エリアのデスティネーション開発はJATAアウトバウンド促進協議会(JOTC)のこれからの取組みの一つなる。
 JOTCとマカオ政府観光局、香港政府観光局、中国文化和旅游部が連携して、「一国二制度」にまたがる観光商品を開発・造成する。これこそ、OTAにはできない、旅行会社の出番ではないか。
 最近は政治課題を乗り越えて、経済・貿易、観光開発を進める潮流が生まれつつある。中郷、韓国、ロシアでも、重要なキーとなるのは民間交流だ。
 JOTCのエリア部会は、中国が東アジア部会、香港・マカオがアジア部会に分かれている。部会の枠に関係なく、港珠澳大橋の開通を契機に、グレート・ベイ・エリアの観光商品造成を2019年のJOTCの活動に組み入れることを提案する。(石原)