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2019.02.18

旅行収支は黒字だが

 財務省が発表した2018年暦年の旅行収支の黒字額は、前年比5331億円増の2兆3139億円と過去最高を記録した。伸び率は30%増と前年の33%増を下回ったが、災害の影響を受けながらも3割の伸びを維持したことは、訪日旅行意欲が旺盛なことを示している。
 月別の旅行収支を見ると、黒字幅が2000億円を超えたのは2月、4〜7月、12月の6カ月で、自然災害の影響を受けた8〜10月を11、12月で取り戻したことになる。災害の発生は常に想定しなければならないが、災害が起きても3割の伸びを確保したことは、官民挙げてのリカバリー策の成果と言えるだろう。
 政府・観光庁は、災害が発生した場合の訪日外国人旅行者の安全対策を進めているが、自然災害の多い日本だからこそ、知らない外国での滞在で不安が募る訪日旅行者の安全対策では、世界一の「観光先進国」をめざしてもらいたい。
 2018年の旅行収支の黒字額は30%増だったが、2018年の訪日外国人旅行者数は前年比9%増の3119万1900人だった。訪日外国人旅行者数は2015年の47%増から16年22%増、17年19%増、18年9%増と毎年伸び率が鈍化傾向にある。2018年は8月以降の災害が旅行者にブレーキを掛けたが、それでも3000万人を超えた。
 2019年、20年の2年間で目標の訪日外国人旅行者数4000万人を超えることができるか、ここからが正念場である。1年間で各440万人増えれば4000万人に到達する。年率14%増で、2019年に3555万人、2020年に4000万人を超える。最近の伸び率を見れば、十分に可能な数字だ。
 しかし、もう一つの目標である2020年の訪日外国人旅行消費額8兆円についてはどうか。2018年は前年比9%増の4兆5064億円と過去最高を記録した。奇しくも訪日外国人旅行者数も9%増で、ちょっと出来過ぎの感も否めないが、この数字では目標の到達は非常に厳しい。
 2019年、20年の2カ年で、各1兆7468億円を積み上げないと目標の8兆円には届かない。この2年間を年率34%増で行けば、2019年6兆円、2020年8兆円を超える。まずは今年6兆円にどれだけ近づけるかが目安となろう。来年は東京五輪の「特需」があるが、これを当てにすると、その先が難しくなるだろう。
 2018年の旅行消費額4兆5064億円を市場別にみると、中国が全体の34%を占める1兆5370億円。以下韓国5842億円、台湾5839億円、香港3355億円、米国2890億円と旅行者数に比例して続く。
 2020年の訪日外国人旅行消費額8兆円、訪日外国人旅行者数4000万人ということは、単純計算して一人当たりの平均旅行消費額は20万円が必要になる。
 市場別に2018年の平均旅行消費額は15万3000円で、20万円を超えているのは、オーストラリアの24万2000円を筆頭に、スペイン、イタリア、中国、英国、フランスの6市場。米国は19万2000円だが増加傾向にある。経済成長に伴い、東南アジアからの旅行消費額は伸びている。韓国の平均旅行消費額は7万7000円で、唯一10万円を割る。
 平均旅行消費額を伸ばすには、欧米豪と急成長の東南アジア、そして訪日旅行者数の24%、旅行消費額の34%を占める中国市場の上昇を図らなくてはならない。ひいては、旅行収支の黒字拡大にも中国市場が大きく関わってくる。
 しかし、中国からの訪日旅行者数の増加に反して、旅行消費額は「爆買い」の終焉で減少傾向にある。観光地の魅力向上、観光開発も重要だが、懐が寒くては財布の紐は閉まる。中国とロシアの消費額減少を見ると、これは経済問題だ。中国経済の動向が訪日旅行の今後を左右する。(石原)