二十歳からの海外体験
若者のアウトバウンド促進がようやく形を見せてきた。若者のアウトバウンド振興を目的に、日本旅行業協会(JATA)と観光庁の連携による「ハタチの一歩」と題した「20歳初めての海外体験プロジェクト」がスタートした。
観光ビジョンに「若者のアウトバウンド活性化」が盛り込まれてから大分経過し、いろいろと検討されてきたが、いよいよプロジェクトが始動した。
プロジェクトの主催は観光関係団体・企業が参画する「若者のアウトバウンド推進実行会議」だが、実現にはJATA海外旅行推進部、アウトバウンド促進協議会、そして観光庁、とりわけ田端浩長官の存在が大きい。
それまでの観光庁のアウトバウンド活性化に対する動きを見ると、プロジェクトが動き出したのは、田端長官が双方向交流の重要性からアウトバウンド促進を強く押したからにほかならない。
また、幾分の強引さはあったかもしれないが、JATA海外旅行推進部の行動力も評価できる。こうしたプロジェクトの実現には「牽引力」が必要なのだ。批判もあるし、結果がどう出るかも分からないが、行動することが重要で、だめならまた考えれば良い。
日本人から徴収する出国税の徴収も始まり、当初観光庁が概算要求した若者の「海外体験」拡大に必要な予算はカットされたが、とりあえずプロジェクトはJATA主導で始まった。
同プロジェクトでは、2019年度は応募者の中から20歳の若者200名を選び、アジア・グアムの12デスティネーションでの海外体験を無料提供する。20歳になって海外旅行を経験してない人がどれだけいるのかだが、既に経験している人、海外旅行に全く興味がな人を除くと、約60%が海外体験をしていないという。こうした海外に興味はあるが、体験していない若者たちの背中を押すのが同プロジェクトだ。
インフルエンサーが海外に行って、SNSで発信してもらうなどの企画も出されたそうだが、どこでも実施しているし、それではプロジェクトの意義がない。ごく普通の20歳の若者の海外体験を同世代の若者が共感し、共有し、多くの若者が海外に向けて踏み出すことに意義がある。
同プロジェクトは3年計画で実施する予定。19年度は中近距離のアジア・グアムだが、20年度以降は欧米やオセアニアもデスティネーションに入れる予定という。ぜひ、プロジェクトを継続して、60%の海外未体験者が海外へ行くきっかけづくりとなってほしい。
航空会社から航空券、観光局から現地滞在費の提供、空港会社からパスポート取得支援を受けて、旅行会社が募集型企画商品を造成する。ツアーでは、現地で文化、スポーツ、社会貢献、ボランティア、若者同士の交流、在外公館表敬訪問、日本人学校訪問などが各観光局の協力で実施される。
大手旅行会社は海外への若者向けのスタディツアー、ボランティアツアーを強化、拡大しており、同プロジェクトのツアーが、若者向けの旅行商品の開発、拡大を一層促進するためのモデル事業になることが期待される。
また、200名の各海外先に対して、ダイヤモンド・ビッグ社が各地域の「地球の歩き方」ガイドブックを無償提供する。
若い女性向けのガイドブックではなくて、「地球の歩き方」を提供するところがいい。「地球の歩き方」は読み応えがあって、とても勉強になる。ぜひ若い人に読んでほしい。
始まったからには、「ハタチの一歩−20歳初めての海外体験プロジェクト」を業界全体で支援し、若者の海外体験商品の造成につなげたい。(石原)