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2017.05.22

減収減益からのV字回復

 旅行各社の2016年度旅行取扱額が出揃い始めた。16年度は、海外旅行は復活し始めたが、旅行会社の取扱額はOTAの台頭、個人旅行化で低迷し、加えて国内旅行が前年の北陸新幹線開業などの好況の反動で厳しくなり、訪日旅行も伸びてはいるものの、中国からの「爆買」の終焉、個人旅行化で成長は鈍化した。
 最大手のJTBの16年度総取扱額は、前年度比5.8%減の1兆6436億円とマイナス。海外旅行は4.4%減、国内旅行も6.0%減、訪日旅行は14.2%増で、旅行を取り巻く環境を象徴した営業成績といえる。
 KNT-CTの旅行総取扱額は5.1%減の4830億円。海外旅行は3.2%減、国内旅行は8.3%減、訪日旅行は30.0%増。訪日は伸びは大きかったが、海外、国内はJTBとほぼ同じように低迷した。
 阪急交通社の旅行総取扱額は5.9%減の2779億円。海外は8.7%減、国内は2.8%減、訪日は17.7%増。海外のマイナス幅がJTB、KNT-CTと比べて大きいのは、回復基調にあるとは言え、年度の初期、中期に主力のヨーロッパがテロの影響を受けたことが大きかったとみられる。
 東武トップツアーズの総取扱額は5.9%減の1506億円。海外旅行が8.4%減、国内旅行が5.8%減、訪日旅行が2.2%増。阪急交通社と似た傾向だが、訪日旅行が思うように伸びていない。
 以上のJTB、KNT-CT、阪急交通社、東武トップツアーの旅行総取扱額がいずれも前年度比5%台のマイナスというのは、かつての「総合旅行会社」の限界を象徴しているようにも思える。
 既に、JTBなどは「総合旅行会社」の看板を下ろしているが、構造上、何もかも手を付けると、同じような状況に置かれる。大手も選択と集中が必要な時期なのかもしれない。
 決算状況からみると、16年3月通期決算はKNT-CTホールディングスが営業ベースで減収減益で、最終損益は赤字だった。阪急交通社も営業ベースで減収減益。HISも2016年10月通期決算は営業ベースで減収減益となり、17年4月中間期業績見通しを営業ベースで減収減益に下方修正した。
 JTBの3月期決算は今週末に発表されるが、HISを含む大手旅行会社の営業ベースで減収減益を余儀なくされているのが、今の旅行業界の現状と言える。
 一方で、中小の旅行会社も厳しい環境にある。ユーラシア旅行社の17年3月中間期は減収で、営業利益は0円と前年の営業赤字は脱したものの、依然厳しい状況は変わりない。ニッコウトラベルは三越伊勢丹ホールディングスに買収された。収益性の高いヨーロッパを主力としていることから、ヨーロッパのテロの影響は、とくに中小旅行会社には大きいようだ。
 こうした逆風下にあっても、業績が好調な旅行会社もある。その代表格が旅工房。東証マザーズに上場した旅工房は17年3月期通期決算は公表した。売上高は4%増の225億円、営業利益は36%増の3億円、最終利益は42%増の1億9000万円の増収増益決算で、売上、利益ともに過去最高を更新した。
 客観的に見て、今の旅行業界で増収増益を達成している旅行会社は特筆に値する。しかも、過去最高の収入と利益を出している。取扱い方面別に専門スタッフ「トラベルコンシェルジュ」の対応と、オンラインの予約・販売の組合わせが成功したと言われるが、具体的に旅工房のどこが違うのか。
 同社は24時間オンラインの予約システムと、メール、電話等のトラベルコンシェルジュのサービスが特徴。事業領域は海外・国内のパッケージツアー、訪日ツアー、法人の出張・団体旅行、航空券販売と広い。
 オンラインによる徹底したコスト効率化が功を奏したとも言えるが、中堅規模の「総合旅行会社」として成果を出していることは、素直に評価すべきだ。4月のマザーズ上場時には、株価はストップ高になった。それだけ市場が評価している。
 旅工房のマザーズ上場と、てるみくらぶの倒産。中堅旅行会社が明暗を分けたが、この2つの事例は、旅行業界の先行きを暗示しているようにも思える。まずは、利用者目線による魅力ある旅行商品の創造と、徹底したオンライン化が旅行業界に求められている。(石原)