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2017.06.19

MICEの本場、米国に学ぶ

 この時期にIPWの取材で米国へ行くたび、米国のB2B展示会・イベントのスケールの大きさを実感する。IPWは全米各都市の持ち回り開催だが、主要都市には大体、5000人クラスが収容可能なコンベンションセンターがある。
 毎日の昼食会は円卓スタイルで、5000人が各円卓に着席する。日本でこれができるスペースが思いつかない。中国でも人民大会堂クラスだろうか。これが、全米主要都市に整備されているとなると、このことだけでも米国はMICEの本場である。
 日本も札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、神戸、広島、福岡、那覇の各都市には、このクラスのコンベンションセンターと、5000人を振り分けて受け入れる国際的なホテルを揃えたい。IRはカジノが先行するが、MICEを謳うからには、まずはそのインフラとしてコンベンションセンターの併設を前提にするくらいの整備を求めたい。
 東日本大震災の翌年の2012年に、WTTC総会が東京と仙台で開催された。フィナーレはグランドプリンスホテル新高輪の飛天の間だった。日本屈指の宴会場だが、ディナー着席スタイルだと約1100名。東京ビッグサイトの東・西のスペースを使って、5000名収容の円卓形式を作ることになろうか。
 政府は「観光ビジョン実現プログラム2017」で、MICE誘致促進に向けては政府横断的な支援策をまとめた「関係府省MICE支援アクションプラン(仮称)」を今年度中に策定し、具体的な取り組むを進める。箱物に対する批判もあるが、欧米と比べると、圧倒的に不利なインフラ整備も進めてほしい。
  ICCA(国際会議協会)が発表した2016年の国際会議開催統計によると、日本は前年比15.5%増(55件増)の410件で過去最高を記録したが、中国は23.1%増(77件増)の410件と遂に同数で並ばれた。日本、中国とも世界7位。アジア域内の誘致競争は今後さらに激化しそうだ。
 日本政府観光局(JNTO)は国際会議の定義を「参加者総数50名以上」「日本を含む3ヶ国以上が参加」「1日以上開催期間」の条件を満たした会議と定義している。
 これをMICEとして、観光庁は2015年のMICEの経済波及効果を公表した。それによると、国際会議による経済波及効果は約5905億円、雇用創出効果は約5万4000人分、税収効果は約455億円と推計した。
 ただ、MICEのMeetingの企業会議、Incentiveの企業報奨・研修旅行、Exhibition/Eventの展示会・イベントなどを国際標準で数値化することは難しいが、これらを含めると、経済波及効果はさらに大きくなる。
 政府は日本再興戦略で、「2030年にはアジアNO.1の国際会議開催国としての不動の地位を築く」ことを目指しているが、中国には既に並ばれており、伸び率をみれば、中国が先へ行く可能性は高い。中国の圧倒的な資本力を考えると、インフラでは適わないにしても、日本の有形・無形の資産を活用しながらMICEを伸ばして行くことは可能だ。
 とくに、観光庁と文化庁、環境省の連携はMICEの将来には非常に重要になる。IPWでは、全米有数の美術館、博物館などがユニークベニューとして活用される。今年のワシントンDCでは、スミソニアンの内部を開放し、飲食に利用され、その近くの米国議会議事堂とワシントン記念塔の間の通りを封鎖し、野外コンサートを開いた。さらに、フィナーレはメジャーリーグのワシントン・ナショナルズの本拠地ナショナルズ・パークが貸切られれた。
 日本なら東京ドームか神宮球場の貸切り、国会議事堂、東京タワー、スカイツリー当たりの一角を閉鎖してB2Bイベントためのユニークベニューとするようなものである。
 日本はユニークベニューの素材なら米国に匹敵、いや歴史から言えば、米国、中国にも負けない。それらをMICEのために活用できるように開放したい。今回のIPWには国土交通省、観光庁だけでなく、JNTOの松山理事長も出席した。来年のデンバーには文化庁、環境省の担当者も参加して、MICEの本場のインフラを実体験してほしい。(石原)