夏休みが変わる
今年のお盆期間が始まった8月10日は、かつてないほどの渋滞ぶりだった。連休初日は11日金曜の「山の日」からだったが、今年は11日から16日までの6連休、製造業などは20日までの10連休が見込めるとあって出足は早かった。
通常なら初日の深夜、今年なら午前0時に出発すれば、渋滞を回避できるはずだった。ところが、10日朝から高速道路は混み出し、夕方になると首都高速、東名などの主な高速道路は渋滞した。これに、夜には渋滞を回避する思惑の前日スタート組が加わり、24時間以上の稀な渋滞が続いた。
これまでなら、11日から休みに入る人が多かったが、今年は前日の10日から前倒して休む人も多かった。「働き方改革」や「休暇分散化」の促進の中で、夏休み休暇がお盆期間をピークにしながらも、なだらかに広がっているようだ。
実際、14〜16日の「お盆期間」は電車もそれほど空いておらず、かつての「お盆休みの帰省」は残念だが、時代とともに薄まっていくのかもしれない。8月13〜16日は「お盆」というより「お盆休み」として残り、中心はこの期間の土・日と3連休、飛び石連休などの効果を生む8月11日の「山の日」になろう。
航空各社は「山の日」が制定された昨年から、お盆期間を8月10日から翌週の日曜日、昨年は21日、今年は20日までに設定して予約状況、旅客実績を発表している。これからは、山の日が日曜なら9日から、月曜なら8日から、それ以外は10日から「お盆期間」はスタートし、そこから10日間以上の長期連休を混雑、料金など考慮しながら日程を決めて楽しむことになりそうだ。
大手航空2社のお盆期間の予約率は、国際線・国内線ともに前年同期を上回り、好調に推移した。とくに国際線は、日本発が北米・欧州・アジア方面のレジャー需要、日本着が中国・アジアの訪日需要が伸びた。ピークは日本発着ともに、山の日の前日、8月10日だった。
JTBによると、今年の夏休みは7月17日「海の日」、8月11日「山の日」の2回の祝日3連休が2回あり、連休に合わせて夏休みを取る人が増えている。とくにお盆期間は、企業の夏休みが8月11日から10連休となる人が多く、さらに働き方改革推進や労働環境の見直しによる連続休暇取得への後押しで、全体的に休暇への関心が高まる傾向にあるとしている。
JTBが実施したアンケートでは、昨年より収入減が23%と収入増の15%を上回り、「先行き不透明の中で大きな支出は控えたい」人は42%に上った。しかし、今年の夏休み取得は昨年と「長さは変わらない」が31%と3割以上で、「昨年夏より遠方へ旅行したい」、「家計は厳しいが、夏休みは旅行したい」という長期休暇傾向が強いという。
日本旅行業協会(JATA)が実施した夏休み旅行動向調査でも、夏休みの人気旅行先トップは海外がハワイ、国内が北海道だった。また、ホールセラーの予約状況によると、海外は8月と9月の予約が好調で、ハワイのほか台湾が人気で、中国、ヨーロッパが回復している。
国内旅行では、8月10日からの上りの渋滞がだらだと続き、帰省も11日から20日までだらだらと続いた。8月10日から20日までのお盆期間の中で、短期、中期、長期の旅行があり、旅行の分散化、平準化が顕著になっている。
既に、海外旅行は高価格の8月を避けて、7月初旬や9月下旬に夏休みを取得する層も出てきている。夏の旅行ピークシーズンも少しずつだが分散化、平準化の傾向に向かっている。
政府は、来年度から地域ごとの実情に応じて学校休業日の分散化を図るキッズウィークを実現する方針を表明している。夏休みや冬休みなどの長期休業日の一部を他の時期に移動し、地域毎の連休の創出をめざす。
そのために、企業もそれに合わせた有給休暇取得促進が必要になる。働き方改革と休み方改革は表裏一体だが、今年のお盆休みは、休み方改革への兆しが見えている。(石原)