安全・高品質のグアムへ
2016年の日本人海外旅行者数は、前年度比5.6%増の1712万人と4年ぶりにプラスで、2017年に入っても1-7月は4.5%増の934万人と順調に推移してる。このまま行けば、2012年以来の1800万人台も見えてきた。
これに対して、2016年のグアムへの日本人旅行者数は3.5%減の75万人と、4年連続のマイナス。17年1-7月は9.3%減の38万人と引き続きマイナスで推移している。グアム政府観光局(GVB)では、17年のグアムへの日本人旅行者数を約70万人と予想している。
日本人の海外旅行者数が昨年以降、回復傾向にあるのに対して、グアムへの旅行者数が減少している。この理由について、ジョン・ネイサン・デナイトGVB局長兼CEOは、「米国航空会社を中心とする日本−グアム間の座席供給減とドル高の為替変動によるグアム旅行の割高感が影響した」と指摘した。
その一方で、グアムへの海外からの総旅行者数は、2016年が8.4%増の154万人と順調に増加しており、17年も1-7月の総旅行者数は4.8%増の91万人とプラスを維持し続けている。日本人が減少しているのと対照的に、韓国からの旅行者が大幅に伸びているためで、2016年は27.4%増の54万人を記録した。
これにより、2016年のグアムへの海外旅行者数の国・地域別シェアは、日本49%、韓国36%、米国5%、台湾3%、中国2%、フィリピン1%の構成で、かつて9割以上占めていた日本が遂に半数を割った。
さらに、今年の1-7月を見ると、韓国からの旅行者数は25.9%増の38万135人、日本からは38万533人と、僅か400人ほど日本がリードしているが、7月は日本から5万1811人に対して、韓国から6万1097人と9000人以上の開きがあった。
グアムの観光産業は、日本からの旅行者によって成長してきたが、2017年は日本と韓国の旅行者数が逆転する「転機の年」となろう。
しかし、世界のツーリズム産業は「量」から「質」へ大きく舵を切ろうとしている。インバウンドが急成長している日本でも、2020年の訪日外国人旅行者数4000万人と旅行消費額8兆円を目標にしているが、どちらも高い目標であるものの、「消費額8兆円」のハードルは極めて高い。したがって、残る3年余りで、富裕層の多い欧米豪市場の拡大を図るために、高品質の旅行造成を重点施策としている。
グアムは既に2017年の日本−グアム就航50周年を契機に、グアムを「インターナショナル・クオリティ・デスティネーション」とすることを目標に「量」から「質」への転換を図っている。具体的には、ホテル、アクティビティ、公共施設、ショッピング、食事などすべてのプロダクトを改善し、質的向上を進める。
これにより、従来のパッケージツアーとともに、ウェディング、MICE、教育旅行など多様な形態の旅行誘致に努めている。成熟した日本の旅行市場では、海外旅行の滞在消費額はアジア各国でも最も高い部類に入る。
一方で、グアムへ個人旅行やダイナミックパッケージで行きたいというマーケットも存在する。GVBでは、こうしたニーズにも応えるため、グアムへのLCC誘致を積極的に働きかけており、10月からは香港エクスプレスが名古屋−グアム線に就航する。
GVBは、10月から新年度の世界的プロモーション・テーマを「GUAMAZING」(グアメージング)に決定した。グアムとアメージングを掛け合わせた造語で、ビーチ、自然だけでなく、ゴルフ、スポーツ、ショッピング、食事、観光施設、アクティビティなど、グアムの驚くほどの多様な魅力を訴求する。
まずは10月からショッピング・フェスティバルが始まるが、日本市場の具体的展開は今後検討される。その前に、9月21日からのツーリズムEXPOジャパンで、「GUAMAZING」を打ち出した多様な体験内容が紹介される。「安心・安全」、そして「高品質」へ、グアムは着実に歩を進めている。(石原)