JATA提言と出国税
日本旅行業協会(JATA)は3月30日、海外旅行政策提言をまとめ、観光庁に提出した。今年は先行して訪日旅行政策提言を発表しており、それに続くものとなる。JATAは、2017年3月に「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2017」に向けた提言書を提出しているが、海外旅行に関しては、2015年7月の「JATA政策提言−海外・国内・訪日旅行−」以来2年半ぶり。
今回の「提言」がこれまでと違うのは、従来は文字通りの「提言」だったが、今回は項目が「提言」とは別に、「予算要望」「税制要望」「実行推進」に分かれ、具体化していることだ。とりわけ、「予算要望」は、2019年1月からの国際観光旅客税(出国税)の徴収による日本人海外旅行者の受益を踏まえてのことと思われる。
2017年の日本人出国者数は1789万人、訪日外国人数は2869万人。一人1000円なら約460億円の税収、うち日本人は約旅行関連180億円だが、訪日外国人はともかく、現状では日本人出国者への出国税への受益は不十分と言わざるをえない。
今回のJATA海外旅行政策提言は、1.政府推進課題の解決へ向けての課題、2.双方向交流の促進、3.安心・安全、4.旅行産業の価値向上・生産性向上、5.若者の国際化支援の5テーマ、10項目、24章に分けた。24章のうち提言が12、予算要望が11、税制要望、実行推進が各1で、予算要望が一挙に増えた。そのうち観光新税導入に当たり、双方向交流の促進、旅行安全情報プラットフォームの構築、旅行産業の生産性向上、価値向上、旅行産業高度化のための人材育成の4つの柱から予算要望した。
その中で、旅行安全情報プラットフォームの構築を予算要望した。これは、2018年度観光庁予算で1億円が計上されており、これの継続、進化を求めた。
また、政府の「明日の日本を支える観光ビジョン」に明記されているアウトバウンドの項目「若者のアウトバウンド活性化」に向けて、今回の提言では、双方向交流の促進で「青少年を中心とした相互理解を促進するモデル交流事業の実施」と若者の国際化支援で「グローバル人材の育成」を予算要望した。
青少年の相互理解促進のモデル交流事業は、ロシア、中国、インドなどの観光協力MOU締結国や外交重点国を中心に、修学旅行を含む教育旅行、姉妹都市間交流事業のセミナー開催、モデル事業選定実施、学生交流プログラムを予算化して支援化する。
また、グローバル人材の育成に向けて、若者の海外旅行を促進して裾野を広げるとして、パスポート取得手続きの簡素化・短縮化、観光庁の「若者の海外旅行の活性化に関する検討会」での議論を踏まえた若者の海外旅行に臨む「はじめの一歩」の支援、観光学科の大学生、観光庁が認めた大学・専門学校を対象に観光人材育成の海外短期留学支援を予算要望した。
若者のアウトバウンド促進は「、若いうちに海外に行くこと」に尽きる。幼少の時に家族旅行で海外に行くことが最も良いが、その次は教育旅行、修学旅行で海外に行くことだ。そのために、海外教育旅行、海外修学旅行に関する規制の緩和、助成を予算要望することが最も効果があると思う。
また、JATAは今回の提言の中で唯一の税制要望として、社員旅行の要件見直しを求めた。IT企業などで社員旅行の価値が見直されていることに乗じて、現行の従業員50%以上を30%以上に緩和して実施率向上を求めている。そこまで求めるなら、「海外社員旅行」の拡大へ優遇措置を求めることも検討したい。
官邸主導の今こそ、省庁の枠を超えて、様々な提言を打ち出すべきで、出国税を支払う利用者と旅行産業という事業者の両方の目線で、とくに利用者の利便を向上することを念頭に提言を打ち出すことで、国民の信頼と理解を得られるのではないか。(石原)