大阪に初の世界遺産
2018年の訪日外国人旅行者数3119万人のうち、東京都は前年比3.4%増の1424万人、京都市は8.3%増の805万人、大阪府は2.8%増の1142万人だった。東京都、京都市、大阪観光局の独自集計によるもので、これをみると、2018年の訪日外客が8.7%増に対して、三大観光地は伸び率を下回っており、訪日外客の地方分散化が進んでいるように見える。
但し、日本政府観光局(JNTO)と都道府県・市では集計方法が異なるのでは、目安にはなるが、結論付けることはできない。
ちなみに、2018年の北海道への訪日外客は12.9%増の298万人で、大きな災害があったにもかかわらず、二桁以上の伸びを示しており、空港・宿泊などの訪日インフラが進めば、今後、さらなる伸びが期待できる。とくに、北海道の場合、米国からの旅行者が21.3%増と2割以上伸びており、スキーリゾートを中心に欧米豪市場からの伸びが予想される。
関西はどうだろうか。京都市は好調に伸びている。米国旅行雑誌の最近の調査でも、世界の観光都市の8位にランクされる京都は、日本で最も人気の都市。新幹線に乗っても、外国人は京都で大部分が降りる。京都府ではなく、京都市の狭いエリアに住民、国内旅行者、激増する訪日旅行者がひしめく。オーバーツーリズムはさらに深刻化することが懸念される。
大阪府への訪日外客は2.8%増にとどまったが、これは災害の影響が大きかったとみられる。第1四半期を終えた時点では、1200万人を越えることが予想されていた。大阪を訪れると、観光地はアジアを中心とする外国人旅行者で今もいっぱいだ。東京にいるとあまり感じないが、大阪に行くと訪日旅行の増加を実感する。
しかし、京都も大阪も訪日旅行者は市内の特定観光スポットに集中し、市への広がり、さらには府全域への面的な分散化はこれからだ。とくに、「大阪都構想」ではないが、大阪府と大阪市の一体行政は、大阪府全体の訪日観光拡大へ重要な役割を担うとみる。
大阪では、2025年の大阪・関西万博に向かって、メジャーイベントが目白押しだ。IR誘致は大阪・関西観光拡大の起爆剤になると期待される。
そして、今回、百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録が決定した。世界最大の墳墓、仁徳天皇陵を中心とする百舌鳥古墳群が堺市、応神天皇陵を中心とする古市古墳群は藤井寺市と羽曳野市に位置する。世界遺産に決定したことで、観光客が少しずつ増えているが、インフラを含めて、観光整備はこれからだ。
百舌鳥・古市古墳群で重要なことは、古墳群は住宅街と共存しており、地域の緑化に大きな役割を担っている。周辺の公園は住民の憩いの場であり、国内・訪日旅行者の急増はオーバーツーリズムを引き起こしかねない。行政は観光政策を慎重に進める必要がある。
こうした時に、「ツーリズムEXPOジャパン大阪・関西」が開催される。初の大阪開催は、今思うと時宜を得ているといえる。
田川JATA会長はメジャーイベントとIRで今の大阪が「天の時」を迎えていると語った。大阪初の世界遺産登録が決定した百舌鳥・古市古墳群は正しく「天の時」かもしれない。
「大阪らしさ」というと、「お笑い」や「粉もの」などに代表されるが、大阪は日本の古代史にとっては、奈良・京都以上に重要な存在という指摘もある。とくに、百舌鳥・古市古墳群の存在は古墳時代、日本の起源、天皇の起源と関わる歴史・文化遺産といえる。仁徳天皇陵はクフ王のピラミット、秦の始皇帝陵を凌ぐ世界最大の墳墓であることも魅力の一つとなろう。
ツーリズムEXPOジャパン大阪・関西は、大阪をゲートウェイとする関西圏に観光客を集める起爆剤となる総合観光イベントを謳う。大阪初の世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」の存在を世界にアピールし、大阪市から大阪府、そして関西圏の観光拡大を期待したい。(石原)