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2019.12.02

日韓の民間観光は「One Team」

 1面にあるように、11月下旬に開催された「韓国の夕べ」は、日韓の観光関係者が一堂に会して、日韓の観光拡大を再確認したイベントだった。さながら、先だってのラグビーワールドカップの日本代表ではないが、日韓の民間観光関係者は「One Team」という想いを強くした。
 今回の「韓国の夕べ」は、韓国観光公社(KTO)が国際観光公社時代に東京支社を設立してから50年という節目の時を迎えて開催されたイベント。この半世紀で、日韓の双方交流人口は1000万人を超えた。どちらも「代えのきかない」国であり、観光はそのことを最も理解する業界なのかもしれない。
 この50年に日韓関係にはいろいろな出来事があったが、両国の関係者はその都度、それを乗り越えてきた。したがって、現在の日韓の問題に関しても克服できることを経験として知っている。問題はどの程度の時を要するかだ。
 KTOの安栄培社長は「これまでの50年を足掛かりに、韓日両国の旅行業界とともに、新たなトレンドと連携した持続可能な観光目標に向かって、より一層力強く羽ばたくための基盤を作っていく」と決意表明している。
 日本旅行業協会(JATA)の田川博己会長は、「民には民の立場がある」と前置きした上で、「民間交流の力強さを今こそ発揮すべき時期に来ている。山も谷も乗り越えて、次のステージに上っていく」を民間の強さを強調した。
 韓国で「反日」を叫ぶ人々、日本で「嫌韓」を声高に語る人々がいる。日本に来れば、韓国に行けば、お互いに理解し合えるのにと思う。過熱する報道を見て、いつもそのことを感じていた。
 「韓国の夕べ」で河村建夫日韓親善協会中央会会長は、韓国から来た青少年が「日本は大変こわい国と思っていたが、実はそうではなく、日本の皆さんはとても親切だった」ということを紹介。河村氏は「これは率直な感想であり、『百聞は一見に如かず』で、日韓交流をもっと促進しなくていはいけない」と強調した。実に尤もな話で印象に残った。
 南官杓駐日韓国大使も「この50年間で約1億5000万人が相互訪問し、うち日本からの訪韓客数は約7800万人に上る。これは画期的なことで、次の50年で青少年の交流を拡大したい」と語った。日韓双方の政治家が日韓交流の拡大のカギとして、「青少年交流」を挙げていることが興味深い。
 そう思っていたら、来賓として駆けつけた赤羽一嘉国土交通大臣は挨拶で、G20観光大臣会合で朴韓国文化体育観光部長官と会談した時に、「日本には『ハタチの一歩』と題する海外体験プロジェクトにより、海外渡航経験のない20歳の若者200名を無償で海外に派遣する計画がある。そのうち35名が韓国を訪れる。ぜひ韓国側でも同様な取り組みを行ってほしいと提案した」ことを紹介した。
 知らない人が聞けば、日本が国家事業として『ハタチの一歩』を実施しているような話だが、ちょっと待て、この企画はJATAが企画、旅行会社、航空会社、空港会社、観光局など観光関係団体の協力により実施しているものだ。国から一銭も出ていないはずだ。
 「若者のアウトバウンド活性化」では、国際観光旅客税(出国税)の導入もあり、アウトバウンド予算として予算計上される期待もあったが、結果的には見送られた。
 2020年度観光庁予算では一般会計で、「教育旅行を通じた青少年の国際交流促進」として、新規に2000万円が要求された。青少年交流の拡大へ教育旅行による双方向交流拡大を図り、2020年度は、中国に重点を置いて事業に取り組むとしている。
 若者のアウトバウンド活性化、青少年の交流拡大を謳うなら、「ハタチの一歩 20歳初めての海外体験プロジェクト」に国の予算を付けなさい。それが実現したら、「国の手柄」として語ってもいい。そうなったら、官民の観光は「One Team」になったと認めよう。(石原)