海外旅行へ続く道
5月25日に首都圏1都3県と北海道の緊急事態宣言が解除され、首都圏1都3県と北海道を含めて、6月19日から国内旅行が再開する見通しとなった。それ以外の42府県は6月1日から県をまたぐ移動が解除され、感染者の発生状況を見ながらとなるが、6月からは国内移動が活発化するだろう。
自治体が先行したが、政府も25日にようやく緊急事態措置解除後の段階的緩和の目安を発表した。各自治体は政府の目安と整合性を図るが、基本的には現在を「ステップ1」、6月19日から「ステップ2」、7月10日から「ステップ3」。この3段階を経て、8月から新たな段階に入る。
観光は、6月18日の「ステップ1」までは県内の旅行から徐々に取り組み、6月19日の「ステップ2」以降に全国都道府県をまたぐ旅行が始まる。7月10日の「ステップ3」からは観光振興が本格的に動き出す。7月下旬からは「GoToキャンペーン」「GoToトラベルキャンペーン」がスタートする。
ただ、新型コロナウイルスの感染再発、第2波の感染拡大の防止へ慎重な見極めが必要で、6、7月の感染状況がこれからの経済活動再開の速度に影響を与える。したがって、「GoToキャンペーン」も7月下旬の開始が予定されているが、早くなる可能性もあれば、8月にずれ込む可能性もある。
いずれにしても観光振興は8月1日からは新たな段階に入り、8月からは「GoToキャンペーン」「GoToトラベルキャンペーン」が本格化し、夏休みの国内旅行の本格リカバリー、さらには各国の感染状況、出入国受け入れ状況を見ながら、海外旅行、訪日旅行の再開へと続く。
政府は「GoToキャンペーン」をなるべく早期に開始したい考えだが、赤羽国土交通大臣は「観光需要の回復をしっかりと後押しできるよう、引き続き事業の開始に向けた準備を進めてほしい」と指示している。
JATAアウトバウンド促進協議会(JOTC)の菊間潤吾会長は、JOTCのB2Bオンラインセミナーで、10月頃からの海外旅行がスタートできるように、夏過ぎからリカバリーキャンペーンが準備できるように環境づくりを進めていく方針を示した。
菊間会長は、「海外旅行の復活は9月頃に近隣諸国の観光交流からスタートし、徐々にエリアを広げ、年明けには欧米諸国のツアーを再開できると予測していた。8月上旬には海外旅行のリカバリーキャンペーンの準備を進めていたが、現状の世界各地の動向、日本の状況を考えると、リカバリーのキャンペーンのスタートは、もう少し後にすべきだろうと考えている」と述べ、10月頃からのスタートを示唆した。
海外では、日本からの海外旅行の受け入れを10月頃から始めたいとの声が出ているという。旅行は相手国の受入があってこそのものであり、万全の体制で海外旅行を始める意味でも、まずは国内旅行から初めて相互の体制を見極めながら進めていくことが望ましいだろう。
赤羽大臣は「緊急事態宣言が解除されたが、国民の旅行への不安が解消されたわけではない」として、リスクを避けながら安全に旅行できるようガイドラインの実施の徹底を改めて要請し、新しい旅行スタイルの確立を求めた。
菊間会長もヨーロッパの旅行再開の動きに言及しながらも、政府の指導、相手国との協力体制を進めて、いつでも動けるように準備していく方針を示している。
「地球の歩き方」による旅行アンケート調査を見ても、国内旅行から海外旅行への動きは思っている以上に早いような気がする。アジアでは、既に日本市場に対して、ビジネス渡航などから開く動きが出てきており、ビジネス需要、ヘビーリピーターのFIT需要などは先行するかもしれない。
ただ、「ニューノーマルの旅行」は、安心・安全が求められ、とくに企画旅行はそれが生命線となる。国内旅行からのスタートを注視し、海外旅行の再開時期を見極めていくことが肝要だ。(石原)