コロナは収束していない
JATAアウトバウンド促進協議会(JOTC)がウェブ上で、海外観光関係団体とともにオンラインセミナーを5月28日、6月1日、3日と3回にわたり開催し、多くの旅行業界関係者が参加し、盛況のうちに終わった。その前にJATAが緊急セミナーを開催し、これも告知後すぐに満員となるなど、新型コロナウイルス感染症の世界的に広がり、旅行業が完全休業状態の中で、再開に向けての関心の高さが伺えた。
オンラインセミナーでは、各国政府観光局の担当者が海外旅行者の受け入れ、とくに日本人旅行者の誘致に以前と変わらず、積極的に取り組むことを強調した。
日本政府が7月下旬から国内旅行向けに、「GoToキャンペーン」「GoToトラベルキャンペーン」を展開する方針で、その後の海外旅行リカバリーキャンペーンに向けて、旅行業界全体が徐々に盛り上がってきたように思う。
しかし、新型コロナウイルスの感染動向は全くもって予断を許さない。6月2日は東京都で34人の感染者数が報告されて、都は「東京アラート」を発動した。これを報道が煽ることで、世間の不安を掻き立てている。
小池都知事が、「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ」を発表し、ステップ0からステップ3の道筋を示した時に、「東京アラート」についても言及した。6月1日からはステップ2に入ったが、ステップ2でもカラオケ、バー(接待を伴わいないもの)、漫画喫茶、マージャン店、パチンコ店、ゲームセンター、接待を伴う飲食店、ライブハウス、いわゆる風俗店の営業再開は「?」である。
これらの休業要請の緩和はステップ3に入ってからで、ステップ2の段階では休業要請は継続される。しかし、5月25日の緊急事態宣言の解除により、これらの店舗の中には営業再開に動き出した店がある。経済社会活動の再開となれば、現金収入が途絶えていることから、一刻も早く店を開きたい気持ちは分かるが、これらの店の再開は、クラスターの発生源になることはデータから明らかで、だからこそステップ3からの再開だった。
安倍首相は、5月25日の緊急事態宣言解除の会見で、「わが国では、緊急事態を宣言しても、罰則を伴う強制的な外出規制などを実施することはできない。それでも、そうした日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができた。正に、日本モデルの力を示した」と語った。
その時に、安倍首相は「夜の繁華街の接待を伴う飲食店、バーやナイトクラブ、ライブハウスなどの施設に、6月中旬を目途にガイドラインを策定し、上限200万円の補助金で、有効な感染防止対策が講じられるよう支援する」と語っている。
欧米、アジアでは、新型コロナウイルスの感染者数が減速していても、ロードマップを厳格に守っている。日本よりも感染者が多くても少なくても、非常事態宣言、緊急事態宣言を延長していても、規制の解除は粛々と行われている。
罰則がなくても守るのが「日本モデル」なら、みんなが解除するなら雪崩を打って解除するのも「日本モデル」なのかもしれない。
ステップ2の段階なのに、新宿はステップ3どころから、ほとんど「コロナ前」の状態に近い。カラオケは長蛇の列、歌舞伎町に夜の喧騒が戻りつつある。これでは段階的なロードマップの意味はまったくない。また、テレワーク、時短通勤はどうなったのか。「コロナ前」のような通勤電車の混みようは、感染の温床になりかねない。
旅行は相互の受け入れによって初めて成り立つ。海外各国が観光再開に向けて動き出している時に、日本の感染が再び拡大しては取り残されてしまう。ここは「日本モデル」の営業自粛、外出自粛に努めてほしい。7月からの国内「GoToキャンペーン」、その先に海外旅行再開に向かって、今は自重するときだ。(石原)