海外旅行再開の突破口
ニュージーランド航空は、東京(成田)−オークランドを6月25日から再開する。オークランド発が6月25日、東京発が6月27日に運航。それ以降は、オークランド発が6月30日の火曜、東京発が7月3日から金曜発で、週1便の運航となる。
最大で週10便を運航していた東京−オークランド線だが、同社では「週1便から再開し、いずれは国際線ネットワークを再構築したい」としている。
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、新型コロナウイルス感染が拡大した4月に既に厳格なロックダウン施策を実施し、完全な封じ込めに成功した後、段階的な制限解除を実施し、国内旅行は6月8日に完全に自由化した。今後は相手国を見極めながら、海外旅行の制限解除を検討する。
国民の命を守るために、いち早く厳格なロックダウンを実施し、海外からの入国も14日間の自主隔離を徹底し、新型コロナウイルスの封じ込めに成功した。その後は、国民の生活を守るために、いち早く制限解除して経済社会活動を再開する。
アーダーン首相の新型コロナウイルス感染防止対策は世界中から注目されているが、古い言葉で恐縮だが、まさしく「決断と実行」の政治と言える。日本政府の「法的に強制力がない」「これが日本モデル」「民度が違う」と言った地方自治体、国民任せの対策とは違う。こういう有事の時こそ宰相のリーダーシップが問われる。
日本政府は新型コロナウイルスの封じ込めに成功しているニュージーランド、オーストラリア、タイ、ベトナムの4カ国と入国制限の緩和を検討している。まずは、ビジネス需要に対して双方での受入れを検討する。
ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センターの6月10日現在の4カ国の新型コロナウイルス感染状況を見ると、ニュージーランドは感染者数1504人、死亡者数22人、回復者数1482人で患者はゼロ。5月21日の1人を最後に感染者は報告されていない。
オーストラリアは感染者数7274人、死亡者数102人、回復者数6740人。6月9日の感染者は7人。タイは感染者数3125人、死亡者数58人、回復者数2981人。6月2日の感染者は2人。ベトナムは感染者数332人、死亡者ゼロ、回復者数317人。6月9日の感染者は1人。
4カ国ともに新型コロナウイルス感染防止対策は「見事」としか言いようがない。とくに、ニュージーランドは「患者ゼロ」である。
ちなみに、同大学集計の同時期の日本の感染状況は、感染者数1万7111人、死亡者数920人、回復者数1万5141人。6月9日の感染者51人。
4カ国の新型コロナウイルス感染者の状況を客観的に見ると、仮に自分が4カ国の居住民なら日本へ行くのは不安になる。自国と比べて日本の方が感染のリスクは高い。したがって、日本からの帰国者には入念な検査が必要と思ってしまう。
逆に言えば、日本からの4カ国への渡航者は、4カ国滞在時の感染のリスクは低い。にも関わらず、日本のCIQの水際対策が非常に厳しい。今回の4カ国との渡航再開も、帰国後の14日間隔離の緩和がどこまでできるかが鍵を握る。
政府間では、渡航者が出国前のPCR検査で陰性証明書を取得し、入国時に陰性証明書と滞在時の行動計画書を提出することで調整しているようだ。
この4カ国だけでなく、グアム政府は7月1日から日本、韓国、台湾からの訪問者受入れ再開を発表した。これに合わせて、14日間の隔離と検査義務の撤廃も決定した。グアムの感染者数は180人、死亡者数は5人、回復者数は163人。6月9日の感染者数は1人。
4カ国のビジネス渡航に対してCIQ対策を見直すなら、グアム側が14日間の隔離と検査義務の撤廃すると表明している以上、日本も帰国後の14日間の隔離策を再検討すべきだろう。4カ国のビジネス渡航とグアムへの観光渡航を海外旅行再開への突破口としたい。(石原)。