旅行業のあり方とは
ホワイト・ベアーファミリーとグループ会社のWBFホールディングスが6月30日に大阪地裁へ民事再生法の適用を申請し、同日に監督命令を受けた。旅行業だけでなく、リゾートホテル、都市ホテルなどのホテル業を運営する同社の負債は、申請時点でホワイト・ベアーファミリーが債権者約160名に対し約278億円、WBFホールディングスが債権者約20名に対し約73億円、2社合計で約351億円。
ただ、去る4月27日にグループ会社でホテル・リゾート運営受託のWBFホテル&リゾーツが大阪地裁に民事再生法の適用を申請し、監督命令を受けており、同社の負債総額が債権者575名に対して約160億円で、3社合計は511億円にも達する。
旅行業界としては、てるみくらぶをしのぐ負債総額だが、WBFグループが旅行業からスタートしたが、ホテル業に進出し、自社運営のホテルをツアーに組み込んで販売しており、旅行業者として括れない部分がある。
既にグループ3社は、星野リゾートとの間でスポンサー就任についての基本合意書を締結し、民事再生法の適用を受けた後、事業を継続して再建を進める。
WBFグループは、「今後は星野リゾートとの間で最終的なスポンサー契約締結のための協議を行い、これまで以上に質の高い旅行およびサービスの提供ができるよう努める」とスポンサー締結の協議を進めることを強調しているが、ここは星野リゾートとはニュアンスが異なる。
星野リゾートは、WBFホテル&リゾーツ、WBFホールディングス、ホワイト・ベアーファミリー3社との間で「スポンサー就任についての基本合意書」を締結したとするも、「同契約では星野リゾートのスポンサー就任が決定されたわけではなく、現時点で支援内容や方針に関して決定された内容はない。今後必要な調査、検討等を行い、星野リゾートの運営力を活用した事業再生の可能性について3社と協議を行っていきたいと考えている」とし、調査、検討の上で事業再生を協議することを表明している。
まずはWBFグループの財務内容などを精査した上で、3社と協議に入るとしており、スポンサーに就任するかどうかの決定はこれからになる。
ホワイト・ベアーファミリーの旅行業は、新型コロナウイルス拡大による移動自粛で、一般旅行者への影響はなく、事業を継続していくという。また、沖縄、九州でホテルを運営するWBFリゾート沖縄やその他の関係会社は、法的手続はとっておらず、従前どおり、通常営業を続けている。今後は、星野リゾートがスポンサーになるかどうかが焦点となるだろう。
2019年2月に開催されたJATA経営フォーラムの分科会、中堅旅行会社のトップによる「これからの旅行業経営」に、WBFホールディングス代表取締役の近藤康生氏がパネリストとして登壇した。
同氏は、旅行業からスタートしてホテル業に進出した経緯を語り、「2010年に経産省から中小企業IT経営力大賞を受賞。20年間、旅行業に携わって儲からなかったが、ウェブ・ITを駆使して儲かるようになった」と述べ、出席したJATA会員に対して、「旅行業だけをやっていてはだめだ」と断言していた。
同社は、沖縄の瀬長島にアマルフィをイメージした「琉球温泉瀬長島ホテル」などホテル運営を積極的に展開。訪日需要を睨んでホテル経営を本格化し、当時、この1年で客室数は2000室から4000室に倍増した。
近藤代表は「旅行業を運営していることは集客、観光のノウハウを持っていると見られる」と述べ、旅行業を強みとして周辺事業、新規事業に進出するメリット、優位性を強調していた。
コロナ禍を予測することは難しいが、急激な業容拡大や過度な設備投資は、需要が冷え込んだ途端に一挙に跳ね返ってくる。ツーリズム産業は旅行会社、ツアーオペレーター、航空会社、ホテル、観光施設などが分担してこそ成り立つ。協力しあってこその産業という思いを強くする。(石原)