Go Toトラベルに「逆風」
Go Toトラベル事業への風当たりが日増しに強まっている。東京都の感染者数が4日連続で200人を上回り、13日から15日までは100人台で推移しているものの、東京から首都圏へ、さらには全国に感染者が広がることを懸念して、地方自治体の首長から懸念の声が上がり、野党、報道各社、一般からも見直しを求める意見が出ている。
それでも7月15日現在、赤羽国土交通大臣、西村経済再生担当大臣は7月22日からGo Toトラベル事業をスタートすることを明言している。参加要件は7月17日に正式に発表となる。
Go To キャンペーンは、運営事務局の再応募などがあり、スタートは8月上旬が予定されていた。それが7月22日以降の旅行から先行して割引を開始すると前倒しとなり、しかも、既に予約済みの7月22日以降の旅行についても、還付手続きをすれば割引対象にするということになった。この「前倒し」は正直驚いた。
赤羽大臣は7月10日の会見で、キャンペーンの前倒しについて、「政務三役が全国を回り、観光、運輸、自治体関係者などからの様々な要望意見を受けた」と述べ、地方サイドが国内観光の早期開催の要望を受け、前倒しを決めたことを指摘した。
7月10日時点では、Go To キャンペーンを前倒しすることについて、地方自治体、地方の観光団体、観光関係者は歓迎していたはずだ。国内観光の主体は、東京を中心とする首都圏からの旅行者であり、ここが大規模に全国に移動することにより、新型コロナウイルス感染症で疲弊した地方経済の回復に貢献する。全国の旅行業者、宿泊業者、運輸・交通機関などのツーリズム産業も経営改善に踏み出せる。
とくに、地方や国内ツーリズム関連業者にとっては、訪日インバウンドが消滅し、再開が全く見通せない状況の中で、頼みの綱は国内旅行であり、首都圏からの旅行促進だったはず。それが、東京・首都圏の感染者が増加したことにより、掌を返したようになるのは、ちょっと腑に落ちない。
Go Toトラベル事業の「前倒し」は準備を考えると早いと思ったが、地方の要望を受け入れたもので、東京都の感染者が増加したら、地方から「前のめり」と言われたのでは、国土交通省も立つ瀬がない。
赤羽大臣は旅行業者、宿泊事業者に対してはガイドラインに沿って、「感染防止策をしっかりと講じた事業者のみが同事業に参加できることとする。感染防止策について参加条件を満たすことを必要とする」とし、一方で、旅行者に対しては「旅のエチケットの徹底などを含めて、「くれぐれも体調が優れない場合は旅行を控えるようにお願いしたい」として、事業者、参加者の双方で感染予防策を徹底することを強調した。
西村経済再生担当大臣、菅内閣官房長官も感染症防止対策と経済社会活動との両立を図り、「Go To キャンペーン」を適切に運営していく方針を改めて示している。
これではだめなんだろうか。感染防止対策を徹底化することで、Go Toトラベル事業を開始することは、同事業の延期の「大合唱」を前に乗り切ることができるか。
前回の本コラムで、海外旅行の再開に向けてPCRの早期拡充と、相互主義に基づく入国制限の緩和を主張した。海外旅行、訪日旅行が壊滅状態の中で、一日も早く海外旅行が再開してほしいと思う。一方で、感染症を封じ込めることが、制限緩和の大前提であることは言うまでもない。
感染症防止のために、経済活動をすべて止めろということは誰でも言える。誰だって新型コロナウイルスは怖い。感染症の防止対策と経済社会活動の再開がどれほど難しいことか。Go Toトラベル事業が国民のコンセンサスを得られることを切に願う。(石原)