レジデンストラックから観光再開へ
新型コロナウイルス感染症の世界的流行し、各国が鎖国状態だったが、予断は許さないとはいえ、感染が漸減傾向に入り、経済社会活動が再開され、国際往来が段階的とはいえ復活してきた。
とくに欧州は早く、EUを中心にビジネス・観光が動き出している。トルコ文化観光省によると、7月単月だけで、ドイツ人の観光客がトルコに約20万人訪問したという。
欧州は観光産業の重要性を認識しており、国民が「基幹産業」としての位置づけを共有している。したがって、経済社会活動の再開、入国制限の緩和により感染が再拡大しても、帰省は強めながらも経済社会活動とのバランスは維持している。
日本でも菅官房長官、赤羽国土交通大臣、西村経済再生担当大臣はGo Toトラベル事業について、観光産業に従事する900万人が瀕死の状態であり、感染防止対策を強化して継続していくことを強調しても、Go Toトラベルと感染の広がりを関連付けて批判する声が収まらない。
要するに感染防止対策の強化というブレーキと経済者社会活動の再開というアクセルを加減し、バランスを取って進もうとしているのだが、これをブレーキとアクセルを同時に踏んでいると解釈する。
次の内閣には、感染防止対策強化と経済社会活動の再開を両立する強い指導力と地方自治体との一体となった連携を望みたい。そうならないと、国内旅行から海外旅行・訪日旅行への次の段階になかなか進むことができないからだ。
そうした中で、日本でも国際往来が動き出した。外務省は各国と長期滞在者用の「レジデンストラック」、14日間の自宅等待機期x間中も行動範囲を限定した形の「ビジネストラック」の運用開始を各国・地域と交渉している。
既に、タイ、ベトナムとは7月29日からレジデンストラックを開始し、9月8日からマレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、そして往来の多い台湾とレジデンストラックを開始することで合意した。
これらの国・地域とは14日間のビジネストラックの早期運用開始を外交ルートを通じて調整しており、さらにシンガポールとも9月にビジネストラックとレジデンストラックを開始する方向で交渉を進めている。
レジデンストラック、ビジネストラックで国際往来の道筋を付け、その先の観光交流の扉が開いてくる。ようやく海外旅行、訪日旅行の再開に光が差してきたように感じられる。
国際往来については、第1弾がベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国から交渉を開始。豪州・NZはオセアニアの往来再開から進めるため、アジア各国との往来再開は次の段階となる。
その後、政府は4カ国に加えて、カンボジア、シンガポール、韓国、中国、香港、マカオ、ブルネイ、マレーシア、ミャンマー、モンゴル、ラオス、台湾の12カ国・地域との往来再開の交渉をスタート。このうちマレーシア等の4カ国は茂木外相が直接訪問し、国際往来の再開が決まり、台湾も日本台湾交流協会との調整によりレジデンストラックの開始が実現する。
政府は4カ国+12カ国の次の段階として、ハワイ州と欧州主要国との国際往来を挙げた。交渉は2国間交渉であるため、感染の再拡大による防止対策の強化と経済社会活動の再開という両国・地域の方向性が一致しないと実現に時間が掛かる。
具体的に言えば、韓国・欧州・ハワイは1日の感染者数の減速、香港・マカオは中国本土と分離した交渉などが条件になるかもしれない。
この中では、政治問題のないハワイ州は米国側が単独交渉を許せば、国際往来の道は開かれる。8月27日から9月9日までのロックダウンが効果を上げて感染者が減速すれば、ハワイ州とのレジデンスストラックの道は開かれる。
日本の感染拡大を危惧する声もあるが、国内感染者数は7月30日をピークに減速しており、それゆえ7カ国・地域とのレジデンストラックが決まった。いきなりの観光再開の道は難しい。ハワイには日本人の長期滞在者も多い。まずはハワイとのレジデンストラック開始から観光再開につなげるべきだろう。(石原)