日本で海外旅行を楽しみたい
Go To トラベルが始まって2カ月弱が過ぎ、東京発着の追加は未だ決まっていないが、国内旅行は少しずつ回復してきている。三密を避け、マスク着用、手指消毒など基本対策を徹底することにより、人数は制限され、数字的にはまだまだ厳しいが、それでも旅行が前に進んでいる。
Go Toトラベル当初は、新型コロナウイルス感染を助長するような批判もあり、旅行そのものが不要不急の最たるものと見られたことが残念だった。それが、自粛することの閉塞感の中で、旅行に行きたいという欲求、旅行をすることによるストレス解消、精神面の充足が評価されてきたと勝手に解釈している。
また、菅義偉官房長官、赤羽一嘉国土交通大臣らが記者会見で、新型コロナウイルス感染症の流行で、瀕死の状態の観光従事者900万人をGo Toトラベルで救済すると再三強調したことが、世間一般、マスコミに浸透したのかなとも思う。それが、感染症の拡大防止策と経済社会活動再開を両立していく方針の理解につながったとみている。
国内旅行が動き出したことで、次は海外旅行、訪日旅行の復活に少しでも踏み出さなくてはならない。出入国制限がある以上、実際に日本人が海外旅行に行く、海外から外国人が訪日することはまだ先だが、海外旅行が再開する前に旅行業界がやるべきことはたくさんありそうだ。
ここでは、PCR検査体制の充実、14日間隔離の緩和などの制度的な話ではなく、旅行市場に対する企画、提案、サービス、営業活動という本業の話をしたい。
例えば、旅行会社は海外旅行の専門ガイドによるオンラインツアーなどを企画・実施しており、実際に海外に行けない中で、様々なツアーを仕掛けている。
また、プリンスホテルの「オーストラリアフェア」に代表されるように、独自の感染防止のガイドラインを設けて、その国の食文化を堪能するイベントを開催している。
観光局では、マカオ政府観光局が都内のポルトガル料理のレストランで、「マカオ美食フェア」を開催、店内にはマカオの装飾を施し、マカオの食文化を味わいながら、マカオの魅力を堪能する企画をスタートさせた。
旅行会社でも、瀬戸内クルーズの「ガンツウ」を利用した高品質ツアー、日本のチャイナタウンなどをめぐるツアーなどを催行している。
それらも魅力的なのだが、もっと海外旅行を醸成するムーブメントが必要と思う。海外旅行だけではないが、旅行の楽しみの一つは「食」であり、食が旅行の最大の魅力という人も多い。もっと、世界の食文化を堪能する国内の旅を提案してほしい。
旅行会社が観光局、ホテル、デバート、レストラン、オンライングルメサイトなどとタイアップして仕掛けることはできないだろうか。フレンチ、イタリアン、中華料理はもとより、日本には世界の国々のレストランが数多ある。
「一流」でなくても、新大久保にはコリアン料理、大久保にはネパール料理、高田馬場にはミャンマー料理のレストランが軒を連ねる。
オンラインのツアーもいいが、正直物足りない。ツアーは五感で感じるものだ。とくに、お腹が空く。
例えば、ホテルの宴会場で、その国の料理を食べ、その国の文化を体験するようなツアーができないものだろうか。そこでオンラインで現地とつながってもいい。イベントには徹底した感染防止対策が必要だが、Go Toトラベルで既に経験しており、その辺りは問題ないだろう。
日本旅行業協会(JATA)は、「美味しいヨーロッパ100選」、「韓国絶品グルメ30選」を選定している。日本にいながらにして世界の食文化を味わう。世界の料理に堪能しながら、世界に想いを馳せる。海外旅行に行きたくなるような企画を期待したい。(石原)