感染対策徹底でGo To延長を
世界の新型コロナウイルス感染者数が5000万人を超えた。とくに、米国は1000万人を上回り、1日の感染者数が12万人を初めて超え、連日10万人台で推移している。また、欧州も感染者が拡大し、フランスでは1日6万人を超え、各国が毎日2万人台の感染者を出し、ロックダウンの措置に踏み切った。
新型コロナウイルス感染防止対策の徹底と経済社会活動の再開。これが今や世界のテーマとなりつつある。感染防止を徹底しながら経済社会活動を進めていくのだが、人の動きが活発化すれば、感染がある程度増えるのも避けられず、いかにこれを抑え込むかが問われている。
日本も新型コロナウイルスの感染防止対策を進めながら、経済社会活動の再開を進めてきた。感染が拡大した時は、接待を伴う飲食店、カラオケ店の営業自粛、酒を販売する飲食店の営業時間の短縮などを要請し、感染防止対策を実施した。
また、7月22日からGo Toトラベル事業をスタートしたのを皮切りに、Go Toイート、Go Toイベント、Go To商店街などのGo Toキャンペーンを実施し、経済社会活動の活性化を進めてきた。
中でも、Go Toトラベルは7月22日のスタートから10月15日までで、利用者は少なくとも3138万人まで達している。とくに、Go Toトラベルに10月から東京発着が加わったことが利用者の拡大に寄与した。
多少の批判はあっても、Go Toトラベルにより国内の旅行業者、宿泊業者、観光関連業者が一息つき、地域経済が回復し、日本全体に活気が戻ってきていることは間違いない。
ただ、経済社会活動が活発化し、街に活気が戻れば気が緩むこともある。欧米ほどの急激な感染拡大ではないが、日本も1日の感染者数が1000人を超える日が続いている。日本の感染推移のグラフを見れば、週を追うごとの拡大は感染の「第3波」と見ていいだろう。この波をどう抑えるかに掛かっている。
菅首相は新型コロナ分科会からの緊急提言を受けて、感染拡大の防止と経済社会活動の両立に向けて対策に全力で当たり、Go Toトラベル事業の促進、国際往来の再開などの需要喚起、経済対策を継続して進めていく方針を改めて示した。
新型コロナ分科会は、ステージ3に入った地域をGo Toトラベル事業から除外することを提言したが、田村厚労相は「北海道のステージ3と国のステージ3は全然違う」と指摘。北海道のGo Toトラベル除外を否定した。
加藤官房長官も「北海道をGo Toトラベル事業の対象からから外すことを検討するような状況にはない」と否定。先行する報道の火消しに努めた。
いくつかの指標がある中で新規感染者数を見ると、北海道のステージ3は10万人当たり週2.5人、ステージ4は10万人当たり週15人。国のステージ3は10万人当たり週15人以上で、北海道のステージ4が国のステージ3に該当する。したがって、北海道は今後の感染防止対策が極めて重要になる。また、沖縄も新規感染者がこれ以上増加すると、国のステージ3に近づくことになる。
Go Toトラベル事業は、年末年始に向かって多くの旅行者が利用すると予想される。Go Toトラベルによる新規感染者は11月9日までで131人にとどまっている。Go Toトラベルによって旅館・ホテル・観光施設の従業員に感染が広がった報告はない。
したがって、Go Toトラベルが感染者を拡大している事実はない。だが、一度発生すれば批判が巻き起こることも予想され、ここは事業者、利用者双方が感染防止対策を徹底化することが求められる。
国は経済対策を第3次補正予算で検討する。これには、Go Toトラベル事業の延長、雇用調整助成金の特例措置の延長が検討されている。事業を維持するためにもこれを実現するとともに、その先の海外旅行・訪日旅行事業の再開に向けて完全防止対策の再徹底と経済社会活動の両立を望みたい。(石原)