Go Toトラベルを止めるな
11月の3連休を利用して、伊豆諸島の神津島を旅行した。トラベルロード社のGo Toトラベルが適用される神津島のツアーは、行きは竹芝客船ターミナルから川崎汽船のさるびあ丸で、帰りは神津島空港から調布空港へ新中央航空のドルニエ228型機で、客船と飛行機を利用する旅だった。
新型コロナウイルスの感染拡大で、日本医師会が「我慢の三連休」、小池百合子東京都知事が「5つの小」を呼びかけるなど、国民の気の緩みが指摘され、自粛ムードが高まりつつある。
しかし、事業者、利用者が完全防止対策の徹底を図り、経済社会活動を再開して、地域経済、日本経済を活性化させていくはずだったのではなかったか。なぜに、Go To事業を感染拡大の要因のように晒すのかは理解に苦しむ。
7月22日からスタートしたGo Toトラベル事業は11月23日までで、宿泊旅行に4000万人が利用し、新型コロナウイルス陽性者は187名にすぎない。しかも、宿泊期間中に陽性が確認された人は45名のみで、それ以外の140名以上はチェックアウト後に陽性が確認された。
また、旅行先のホテル、旅館で、Go Toトラベル事業に起因して感染が拡大したケースはなく、Go Toトラベル事業と感染拡大の因果関係はない。
Go Toトラベル事業の運用では、感染拡大防止と経済社会活動の両立を図るため、観光事業者、旅行者双方に感染拡大防止対策の徹底を求め、それが成果を収めてきた。
11月20日の新型コロナウイルス感染症対策分科会の提言では、Go Toトラベル事業は感染拡大の主要な要因とのエビデンスはないと明言しており、赤羽大臣は12月24日の会見で、「こうした対応をとることは旅行者、旅行業者双方に大きな影響を与える。まさに苦渋の決断」と悔しさを滲ませた。
今回のツアーでも、さるびあ丸に乗船する時の検温、消毒から始まり、船内は社会的距離の確保とマスクの着用が徹底されている。帰りの新中央航空も同様で、事業者も利用者も感染防止対策は必須として浸透しており、Go Toトラベルを利用する旅行者に対して「気の緩み」を指摘する声があるが、それは接待を伴う飲食、酒を伴う飲食などの方がその懸念は高いのではないか。
とくに、旅行した伊豆諸島、ツーリズムEXPOジャパンが開催された沖縄や奄美諸島などの島嶼地域は、一度感染が拡大すれば医療現場が逼迫するだけに、旅行者、事業者は感染させないように一人ひとりが感染に対する万全な注意が求められる。感染防止に対する意識は旅行者、事業者も高いとの印象を持った。
また、Go Toトラベルの地域共通クーポンを島内で消費することにより、地域経済の活性化に役立ち、感染防止対策の徹底と経済社会活動の両立を目の当たりにする思いだった。
知事の要請で政府は、札幌市と大阪市着の旅行をGo Toトラベル事業から3週間の暫定で対象外とした。政府の感染レベルがステージ3に近い両市への旅行は当面避けるが、両市からの旅行者は日本全国にGo Toトラベルで旅行ができる。
赤羽大臣は、今後のGo Toトラベル事業の運営で、「風評被害を生み出すことは許されない。国民の命を守るのも大事だが、暮らしも守らないといけない。どっちも大事だ」として、Go Toトラベル事業を通じて感染拡大防止と経済活動の両立を引き続き図っていく方針で臨むことを明言している。
Go Toトラベル事業が要因で感染が拡大したエビデンスは全くないが、今後Go Toトラベルで感染が拡大する可能性があると指摘されれば、それを否定することは難しい。だが、Go Toトラベルで観光事業者が一息つき、4000万人の利用者が楽しみ、何よりも地域経済が回復しているこの事業を、エビデンスもないのに感染の槍玉に挙げることは納得できない。暮らしを守り、生き抜くために、Go Toトラベルを止めてはいけない。(石原)