【潮流】ワクチン打ったら海外旅行か
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種効果は、感染者数の減少と経済社会活動の本格的な再開へ世界を劇的に変えつつある。欧米では、ワクチ接種はマスク着用を免除するなど感染対策そのものへの見直しとともに、ワクチン接種者は海外旅行も可能となるなど、PCR検査陰性証明からワクチン接種証明(ワクチンパスポート)が海外旅行に必携となりそうだ。
日本では、医療関係者、高齢者に対するワクチン接種もこれからの状態で、ワクチン接種が行き渡るのがいつになるのか分からない。しかも、新たな変異株が登場して、摂取するワクチンが新しい変異株に効かなかったらどうなるという不安も生じてくる。
ただ、これからは新たな変異株と、それに対する有効なワクチンの開発という「いたちごっこ」のような終わりのない戦いが続き、それこそが「ニューノーマル」の時代なのかもしれないという気もする。
ワクチン接種の効果による1日の感染者数はピーク時と比べて、米国は30万人から2万7000人、フランスは12万人から1万7000人、英国は6万8000人から1900人、ドイツは4万9000人から7600人と急減している。高止まりの日本は1日の感染者が5000人を超えており、ワクチン接種の進む英国は1日の感染者数が日本よりも減少している。
こうした各国は、感染者が拡大している国々に対しては水際対策を強化しつつも、ワクチン接種が進む国や感染者数の少ない国に対して、国際往来の扉を開き、観光活動再開に動き出している。本当は、日本も欧米と連動して、国際往来の扉を開き、海外旅行、訪日旅行を再開したいところだが、ワクチン接種では「最後進国」という実に恥ずべき状況で、開発はともかくとして、ワクチン手配に後塵を拝したことは検証べきだろう。
東京オリンピック・パラリンピックの開催にしても、欧米のようにワクチン接種が進んでいれば、感染者も減少し、国民の80%が反対するような事態は避けられたのはないか。オリンピック・パラリンピック開催のために何が必要だったのか。何が何でも開催のお題目ばかりが並んでいていたが、今後は開催の可否に関わらず、何が問題だったのか徹底的に究明してほしい。
欧米を見ると、国内旅行はもとより、海外旅行・訪日旅行にとって、ワクチン接種効果は朗報のように映る。一方で、全体的にワクチン接種が遅れているアジアでは、徹底的にロックダウン、水際対策で感染を封じ込めていたが、変異株の流入で、感染者が遂に増加し始めたe。
1日の感染者数がタイは5月17日に9635人と日本を上回る急増ぶりを示した。シンガポール、ベトナム、インドネシア、カンボジアと東南アジア諸国も増加している。シンガポールの感染者増加を受けて、香港は5月26日から予定していたシンガポールとの「トラベルバブル」を延期した。それだけでなく、香港は水際対策の強化のため、感染者が高止まりする日本を「高リスク国」に指定し、入国制限を強化した。
新型コロナウイルスの封じ込めに成功した国・地域の一つとして評価されている台湾も変異株の流入で、感染者数が一桁台から5月17日には一挙に335人まで急増した。変異株の感染力の強さを思い知る数字だ。
各国を見ると、ロックダウンを始めとする感染防止対策は効果を上げている。日本のように感染防止の基本的な対策を推進し、それなりに効果を上げてきた国もある。感染防止対策と経済社会活動の両立の中では、経済活動を再開、本格化すれば感染者はそれなりに増える。そこで、緊急事態宣言など感染防止対策を強化すれば、高止まりから緩やかに減少はするものの減少の決め手とはならない。
東京オリンピック・パラリンピックだけでなく、経済・観光・社会・イベント活動など、何をするにしても前提はワクチン接種であることがはっきりした。極論すれば、ワクチンを接種すればどこにでも行ける。ワクチンを接種した高齢者は海外旅行に出掛けられる。海外旅行が近づいてきたと言えるかもしれない。(石原)