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2021.06.14

【潮流】ワクチン接種証明者は隔離免除を

 海外旅行の扉が開かれようとしている。新型コロナウイルスのワクチン接種の普及で、欧米では海外旅行が具体的に動き出した。JTBの山北栄二郎社長は先の決算会見で、海外旅行はハワイ、アジア、欧州の一部の国・地域を対象に、9月ころから段階的に始まると展望した。また、トラベル懇話会の原優二会長は同会の総会で、今秋の海外旅行の再開に向けて状況を切り開くことを強調した。
 海外旅行再開の「決め手」となるのは、言うまでもなくワクチンで、ファイザー社やモデルナ社のワクチン接種率の高い国ほど、感染が減速しており、ワクチンの完全接種者に対して海外旅行の門戸が開く動きが出ている。
 米国疾病予防管理センター(CDC)は、新型コロナウイルスのワクチンを完全に接種した人は、感染リスクが91%低減されることが分かったと発表した。また、ワクチンを接種して、新型コロナウイルスに感染した人の症状は軽く、短期に快復することも証明されたとした。ワクチン完全接種は、2回目の接種から14日以上経過した状態という。
 ファイザーとモデルナのワクチンの実効性が証明された形だが、一方で、外電によると、中国シノファーム製のワクチンの有効性に対する不安が広がっており、このワクチンを接種している各国の感染者が拡大している。
 ワクチン接種が海外旅行の再開を含む経済活動本格化の「切り札」となれば、ワクチン接種のスピード化の一方で、実効性、新たな変異株への効能などが問われてくる。
 国内のワクチン接種は、地方自治体主体から始まり、自衛隊の大規模接種が加わり、さらには1000人以上の企業・学校からの職域接種、1000人以下でも中小企業の職域接種支援が始まろうとしている。6月9日現在で、職域接種は414会場が申請したという。
 既に、政府が目標にしている1日のワクチン接種100万回は達成しており、東京オリンピック・パラリンピックの開催可否とは別に、今秋までにはワクチン接種は相当なスピードで進みそうな状況だ。
 緊急事態宣言の延長なのか、ワクチン接種進捗の効果なのか、はっきりとは分からないが、国内の感染者数が減速し、5月14日の6269人をピークとして、6月7日は1276人と1000人台まで下降した。
 こうした日本の感染状況を受けて、EUは日本を不要不急の渡航制限解除国に追加し、6月3日から欧州へ渡航が可能になった。一方、米国も国務省が6月8日、CDCが日本への旅行水準をレベル4「旅行の中止」からレベル3「旅行の再検討」に引き下げたことを受けて、米国市民に日本への旅行緩和を勧告した。ただし、日本に行くなら、その前にワクチンの完全接種を推奨している。
 EUは隔離免除のワクチンパスポート(ワクチン接種証明書)による域内移動解禁を7月から開始する。日本も海外渡航にワクチンパスポートを発行することを検討している。
 こうした動きを受けて、ワクチン接種が始まっている高齢者を対象に、海外旅行の動きが出ている。タイ国政府観光庁(TAT)は7月1日からプーケットに外国人旅行者を検疫隔離免除で受け入れると発表した。条件はワクチンを接種済みで、なおかつプーケット到着時の感染チェックで陰性判定であること。日本の高齢者でワクチン完全接種済みなら、プーケットへの旅行が可能になる。
 EU、米国、アジアが日本に対して渡航を緩和したからといって、そう簡単に行けるわけではない。現状ではこうした訪問先が隔離免除になっても、日本に帰国したら14日間の自主隔離が待っている。ここが互恵的関係にならないと、日本からの海外旅行の扉が開かれたとは言えない。
 今秋から海外旅行が動き出すとなれば、訪日旅行が再開するということだ。アジア・欧米が自国の観光誘致を進める中で、訪日旅行の再開が遅れるようなことがあってはならない。それなら、互恵に基づき、ワクチンパスポート保有者には14日間の隔離免除をすべきだ。(石原)