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2018.05.21

祝日をコロコロ変えるな

 日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)などの観光関連6団体とJR東日本、日本航空、全日空による2021年以降のハッピーマンデー(祝日3連休)の存続を訴える合同会見は、多くの一般メディアでも取り上げられ、ネットでも反響を呼んだ。
 JATA本部で行われた会見には、珍しく政治部の記者も出席し、この事案が「政治的」なものであることを伺わせた。超党派の国会議員による海事振興連盟が、2021年の東京オリンピック・パラリンピック混雑対策で海の日を7月23日に移動する代わりに、2021年以降に海の日の7月20日固定化に動いているからだ。
 この件に関するヤフーのインターネット調査などを見ると、6割以上がハッピーマンデーの存続に賛成している。せっかくの3連休なのに、なぜ「海の日」だけ固定化するのかという声も大きい。「海の日の理念は分かるが、7月20日は記念日として、祝日と記念日が別でもいいのではないか」と意見もある。
 今回の合同会見でJATAなどからは、「ハッピーマンデーは国民に定着しており、旅行需要拡大、地方活性化にに大きく寄与している」として存続を強く訴えた。1998年に国民運動で設定されてから約20年。現状では、ハッピーマンデーは「3連休」として国民に浸透している。
 今回の会見の反響がこれだけ大きかったのも、政治的な動きはともかく、ハッピーマンデーがなくなるかもしれないことに対する国民の関心が高いからではないか。一般紙の見出しでも「ハッピーマンデーやめないで」「7月の3連休を奪わないで!」など国民の感情に訴える情緒的なものが多かった。
 ハッピーマンデーを廃止し、海の日を復活させることの意義は何なのか。「国民の祝日に関する法律」第1条には、「自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを『国民の祝日』と名づける」。第2条で海の日は「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」と定める。
 新しく制定された国民の祝日が、定着するには時間が掛かる。ハッピーマンデーの1月15日は成人の日、9月15日は敬老の日、10月10日は体育の日であり、成人の日を1月第2月曜日、敬老の日を9月第3月曜日、体育の日を10月第2月曜日とする第2条には今も違和感がある。
 新しく制定された海の日が7月20日と言われても、海事関係者は知っているだろうが、一般には馴染みが薄い。しかも、浸透前に「7月第3月曜日」とされたので、なおのこと分からなくなったことは認める。だが、山の日は8月11日に固定化されているが、山岳関係者はともかく、山好きな人でもよく知られていない。ハッピーマンデーでも、固定化でも、どちらも浸透度は足りない。
 蛇足だが、空の日は9月20日。航空関係者は以前の航空日、今の空の日を知っているが、これだって広く知られているわけではない。
 働き方改革が進み、有給休暇取得率が欧米並みになり、国民が自由に休暇を取得できる時代になったら、ハッピーマンデー制度はもとより、祝日そのものを見直してもいいと思う。同制度を議員立法化した背景には、有給休暇の取得が進まず、祝日3連休を立法化することで、国民の休暇を促進することが最大の狙いだからだ。
 その結果、経済的に見れば、JATAの試算では、海の日三連休の旅行消費額は2388億円、経済波及効果4776億円に達する。政治的や文化的な理由から海の日を固定化した場合の旅行消費額のマイナスは1034億円、経済損失は2068億円に及ぶとしている。これを棒に振ってまで固定化する意味があるのか。ここは冷静に考えてほしい。
 今後、有給休暇取得率が欧米並みになった時、「国民の祝日に関する法律」そのものを見直し、祝日と記念日を分けるのもいいだろう。そうなっていないのに、コロコロ変えるべきではない。話はそれからだ。(石原)