新しいアメリカを売る
今年のIPWは、記念すべき第50回を迎えた。パウワウ時代から数えて四半世紀、開催場所は25年ぶりのデンバー。「マイル・ハイ・シティ」と呼ばれ、1600mの高地にあるデンバーは、1年365日のうち300日が晴れの日と、全米でも指折りの晴天率を誇るが、到着した5月19日は曇り時々雨、翌日も生憎の天候だったが、グランドオープニングの21日は綺麗に晴れわたった。
この天気のように華やかに開幕したIPWは、前年のIPWワシントンと打って変わって穏やかな大会となった。昨年はトランプ大統領の訪米旅行プロモーション予算縮小の発言、中東7カ国の渡航制限など、米国の観光産業を揺るがす事態に発展し、ブランドUSAの存続自体も危惧された。
このため、IPWワシントンは、ブランドUSAのこれまでの業績、ツーリズムの米国への貢献度を訴える場となり、基調講演にはウィルバー・ロス商務長官が出席してツーリズム産業の重要性を強調するなど、緊張感に張り詰めていた。
だが、ここはIPWの場。和やかな雰囲気に変わっても、サプライヤーとバイヤーによる商談会は活況を呈し、メディアは500名も参加するなど、IPWらしい熱気に包まれた。
今年もプロモーションは中国、インド、韓国などの成長市場の強化が目立つ。とくに中国は双方向交流人口が2016年には500万人を突破し、2016年の訪米中国人旅行者数は、前年比15%増の297万人と300万人に迫った。一方で、訪米日本人旅行者数は、5%減の356万人で、既に旅行消費額では抜かれているが、旅行者数でも早期に抜かれる状況だった。
しかし、2017年は米中間の政治的、経済的な背景もあるだろうが、1-9月までで訪米中国人旅行者数は6%減の224万人と前年を下回っている。とくに、2月以降は9月までマイナスが続いている。
ちなみに、ブランドUSAが強化を進めるインドも2017年1-9累計は、13%減の83万人と1割以上のマイナスとなっている。中長期的にみれば、人口規模からして成長市場であることは間違いなく、欧州や日本、韓国、アジア諸国と競合する市場であることから、短期的なマイナスは問題なく、とくに中国にはB2B、B2Cで巨額な予算を注ぎ込む。
一方で、2017年1-9月の訪米日本人旅行者数は前年並みの269万人で、このまま推移すると350〜360万人が予想される。1-9月の訪米市場の中で、ハワイは7%増、グアムは13%減、マリアナは19%減で、これを差し引くと米本土は1%増で、減少しているわけではない。グアムが北朝鮮のミサイル問題の影響を受けて大きく前年を割ったことが影響した。米本土への旅行者数は2016年が4%増の147万人。2017年は微増か横ばいで終わりそうだ。
ハワイはLCCの乗り入れ、ANAのA380型機就航など今年、来年にかけてさらに増加する傾向にある。グアムも一時のマイナスを脱しつつある。マリアナもスカイマークの就航が決まった。こうした追い風の中で、米国を成長市場に戻すのは米本土を拡大することにある。
旅行業界がOTAと競合しても意味はない。旅行会社の強みを米本土の旅行で発揮することだ。パッケージなら高品質な旅行商品を造成する。新たなデスティネーションを開発し、パッケージならではの旅行商品を企画したい。
さらに、米国への教育旅行を拡大する。ブランドUSAも日本からの教育旅行の拡充を望んでいる。
成田からの直行便は大都市だけでなく、IPW会場のデンバーをはじめボストン、ダラス、ヒューストン、ポートランド、サンディエゴなどに拡大した。それらを起点とした新たなデスティネーション、旅行商品の企画・造成を期待したい。
日米観光合同ミーティングを実のあるものにするためには、結果が求められる。日本へのプロモーション予算を増やすためには、旅行業界が結果を出すことだ。(石原)