2018年は「グアム回復の年」
2017年の日本人のグアムへの旅行者数は、前年比16.8%減の62万547人となった。北朝鮮のミサイル問題の影響を受けて、8月以降の減少が影響した。上半期(1-6月)は9.9%減の32万8722人だたが、下半期(7-12月)は23.3%減と大きなマイナスだった。ただ、供給席数は約87万2000席で、利用率は71%と70%台をキープした。
グアム準州のレイモンド・S・テノリオ副知事とグアム政府観光局のジョン・ネイサン・デナイト局長は、北朝鮮ミサイル問題を受けて、昨年8月下旬に「グアムに関する正確な情報を日本の皆様に伝えるため」に来日し、グアムの治安について警戒レベルを一度も引き上げておらず、住民も観光客も通常通りの行動を行っている点を強調した。
また、12月には日本−グアム間就航50周年を記念した「グアム・メガ・ファムツアー」を開催、全国から旅行会社、メディア、インスタグラマーなど400名近くが参加し、日本人需要の回復を図る方針を示した。
北朝鮮のミサイル問題という外的要因によって、日本人旅行者数が大きく減少したことは極めて残念だが、その後のGVBのリカバリー策は評価できる。安全・安心というセンシティブな問題に対して、官民挙げて冷静に対応した。
GVBでは、2018年のグアムへの日本人旅行者数を45万人から50万人と見込んでいる。2018年の供給席数が、前年の87万2000席から約61万席と約26万席ほど減少すると2月段階で予想している。チャーター便が予定通り運航すれば、1万席の供給増が見込まれるととしている。
政治問題で急激に需要が減少したことによる航空会社の減便が影響しているが、それでも明るい材料としては、日本航空が3月25日からの夏期スケジュールで、成田−グアム線を1日2便に増便することで、2018年は反転攻勢に打って出たいところだ。
JAL関係者によれば、グアムは回復してきており、1日2便の需要は十分にあると需給予測を立てている。GVBでは、2018年はスタート当初から毎日チャーター便が運航し、JALの成田線増便もあり、金子宗司日本代表代理は、「長期的には新規就航、短期的にはチャーター便活用」で2018年を乗り切る方針を示した。
金子日本代表代理は、「2018年は回復の年」と語る。確かに、これに尽きる。GVBなど地元関係者、増便するJALだけでなく、日本の旅行業界が全面的に協力して、グアムの日本人旅行需要を元に戻さなければならない。
旅行業界として、B2Bで何ができるのかをもっと突き詰めていきたい。4月以降にGVBと旅行会社による東京、大阪、名古屋での店舗キャンペーン、地方市場でのプロモーションの展開が計画されているが、もっとグアムのリカバリー策について議論すべきだ。
JATAアウトバウンド促進協議会(JOTC)で、グアムは北中南米部会。そのワーキングは、ラテン・アメリカ、ハワイ、日本・アメリカ旅行促進部会(ディスカバー・アメリカ・プロジェクト)の3つに分かれる。グアムは日本・アメリカ旅行促進部会に入るが、ここはアメリカ本土市場が中心になっている。
アウトバウンド促進協で、グアムのリカバリー策についてもっと議論が必要だ。とくに、今年のテーマの一つが若者のアウトバウンド促進にあるなら、北朝鮮ミサイル問題で大きな影響を受けたグアムの教育旅行の立て直しは、大きなテーマになる。また、グアムが力を入れるMICE需要に対しても旅行業界が取り組むべき課題だ。
2000年には100万人を超えたグアムへの日本人旅行者は漸減傾向にある。政治問題の影響を受けたとは言え、今年は50万人と最盛期の半分になろうとしている。旅行業界として、グアム観光需要の回復に全面的に協力することが、今年のテーマ「アウトバウンド躍進」に資することになる。(石原)