2018年は「アウトバウンド躍進」
2017年の海外旅行者数は前年比5%増の1790万人の見込みだが、2018年はJTBの旅行動向見通しで1820万人と予測した。日本旅行業協会(JATA)は、海外旅行者数2020年2000万人を目標に置く。残り3年で200万人の上積みを図るなら、年間平均70万人に増やさないと2020年2000万人には到達しない。
トラベル懇話会の福田叙久会長は、新春講演会の挨拶で、「2018年をアウトバウンド躍進の年」と位置づけ、海外旅行者数「2018年2000万人」、「2020年2500万人」と高い目標を提案した。今年1年間で200万人を上積みすることは難しいが、そのくらいの目標を持たないと、いつまでも2000万人の“呪縛”から離れられないかもしれない。
JATA田川会長も年頭の会見で、海外旅行者数について「人口の2割、最低でも2400万人に達してしかるべき」と述べており、2500万人も視野に入る数字だ。
JATAアウトバウンド促進協議会では、2020年2000万人の目標に向けて、方面別の数値目標を立てている。2016年比で北中南米28万人増(7%増)、アジア80万人増(13%増)、欧州43万人増(13%増)、オセアニア・大洋州31万人増(52%増)、中近東・アフリカ2万人増(23%増)、東アジア211万人増(31%増)とすることで、合計289万人が増加して2000万人を達成できる。
2020年2000万人を前倒しで達成するために、業界が課題を共有して取り組むことが必要だ。その主体となるのがアウトバウンド促進協で、2年目の今年は正念場となろう。
2018年のスタートは、バブル時代以来の株価を記録するなど、実感は別として、表面上は好景気の様相を呈している。為替も安定し、北朝鮮問題、テロなどの不安要因はあるものの、景気の好調は海外旅行の追い風になる。取らぬ狸の皮算用を敢えて承知で言えば、1900万人の可能性はあるとみる。
この1年のアウトバウンド促進協議会の活動を見ると、各方面の観光局サイドの期待が大きいことをひしひしと感じる。それにJATA、旅行会社側が応えなくてはならない。
例えば、2017年のアウトバウンド促進協の活動の成果として、欧州部会の「ヨーロッパの美しい村30選」、「欧州文化首都」に続く「欧州の美しき街道・絶景」の選定、東アジア部会の「世界遺産級 台湾30選」の決定がある。
2018年はこれらをテーマにした旅行商品が造成され、多くの日本人旅行者が現地を訪問することが期待される。同時に、他の方面でも具体的なテーマをつくり、商品化に着手しなければならない。
また、「明日の日本を支える観光ビジョン」に盛り込まれている若者の海外旅行、教育旅行の促進を具体化することも課題となる。
JATA田川会長は前述の年頭会見で、JATAとMOUを合意している国々について言及し、これらの国々への需要拡大に努めることを強調した。また、2017年は欧州需要の回復と中国への観光需要の上向きが特筆されており、2018年に入っても中国観光需要の伸び率は上がっている。
その上、今年は日仏友好160周年、ロシアにおける日本年、日本・スペイン外交関係樹立150周年、日本・スウェーデン外交関係樹立150周年、日本・メキシコ外交関係樹立130周年、日本・インドネシア外交関係樹立60周年、そして日中平和友好条約締結40周年と二国間の周年事業が目白押しだ。
とくに、日中間の記念すべき年に、中国へのアウトバウンドの底上げを図ることが、アウトバウンド2000万人の鍵を握ることになる。
トラベル懇話会の新春講演会で講演した菅義偉内閣官房長官は、双方向の観光交流について、インバウンド2大市場の中国と韓国へ、同程度の日本人旅行者を送客することの重要性を指摘した。各方面へバランス良く旅行需要の拡大を図ることを基本とし、それに加えて、中国と韓国の需要を押し上げていくことが、「アウトバウンド躍進」の鍵となろう。(石原)