旅行業界変革の幕開け
新年明けましておめでとうございます。
2017年は、てるみくらぶの倒産と国際観光旅客税(仮称)の導入に振り回された1年だった。田村明比古観光庁長官は、2017年を漢字一文字で「展」の年と語ったが、観光庁にとっては訪日旅行の拡大、国際観光旅客税の導入で、そういうことなのかもしれないが、旅行業界からすると、てるみくらぶで旅行業界の信頼が揺らぎ、日本人出国者にも国際観光旅客税が課されたことで、「展」のようなポジティブな印象を持った人は少ないのではないか。
さて、2018年だが、日本旅行業協会(JATA)田川博己会長は、年頭の辞で2018年を漢字一文字で「備える」の「備」を挙げた。2018年を「変革の時代の幕開け」の年と位置づけ、19年1月導入の国際観光旅客税、てるみくらぶ事件再発防止策、ランドオペレーター登録制度、通訳案内士制度改定などの導入に対して、旅行業界がしっかりと対応していくことを強調した。
JTBは2018年の旅行動向見通しについて、海外旅行者数は前年比1.7%増の1820万人、訪日外国人旅行者数は12.3%増の3200万人、国内旅行者数は1.8%増の3億1120万人と予測した。海外旅行者数は3年連続のプラス、訪日外国人旅行は前年比で年間350万人増の成長と見た。
旅行者数はともかくとして、今年は今後の10年を占う「旅行業界変革の幕開け」ではないかと考える。4月にスタートするJTBの統合が、旅行業界全体に大きな影響を与えると思うからだ。
JTBの高橋広行社長は、年頭インタビューで、2018年を「JTB、第三の創業の年」と位置付けている。海外旅行・国内旅行のFIT化、ウェブ化への対応として、新たなブランド「ダイナミックJTB」をスタートする。
ここで注目するのは「JTBならでは価値」の追求、商品・サービス提供で、OTA、ダイナミックパッケージ、大手・中小旅行会社は、JTBのこの「仕掛け」に対して、どのように対抗していくのか。
今回のJTB統合で最大のポイントになるのは、「企業文化・風土の変革」ではないか。企業の文化や風土を変えることは並大抵のことではない。組織や体制を変えることはできても、人の心を変えることほど難しいものはない。
企業合併では、それぞれの企業の文化・風土を変革して統合するには20年以上を要すると言われる。民営化でも、役職員の心を民営化しないことには、真の民営化にはならないと述べた経営者もいた。それほど難しいということなのだろう。
ただ、最近頻発する日本を代表する大手企業の不祥事を見ると、伝統的な企業ほど構造改革が急務なのかもしれない。
日本の旅行業界のリーディングカンパニーであり、100年以上の歴史を持つJTBが、企業文化・風土を変え、ビジネスモデルをコミッションからフィーに移行し、ダイバーシティと働き方改革を促進するという。
2017年の年頭の辞で、高橋社長はOTAの台頭で、リアルエージェントの経営環境に危機感を表明していたが、その答えがダイナミックJTBであり、統合・改革と見る。
一方で、HISは2017年に社長が交代し、創業者の澤田秀雄氏が社長に復帰した。陣頭指揮で、HISを改革していくのだろうか。ダイナミックJTBに対して、HISや楽天がどう動くのかも注目される。
旅行もウェブが主流となりつつある。JTBはルックやエースからダイナミックJTBが主力商品になる。大手旅行会社も場貸しサイトを含めてウェブ販売のシェアが大きくなる。最大手がそこに舵を切り、価格、品質はもとより、独自の旅程保証、取消料免除制度などのサービスを提供する。
「第三の創業へ、2018年はリセットし、もう一度JTBをつくり直す」と高橋社長は語る。JTBの変革に注目したい。(石原)