リゾート路線にLCC参入を
2017年1-9月累計の日本人出国者数は、前年同月比5.5%増の1271万8600人となった。残り3カ月をこのままの伸びで推移すれば、2017年は1800万人の大台を突破し、2012年の1849万人に次ぐ、史上2回目の1800万人台を乗ることが期待される。
訪日インバウンド需要の伸びに隠れがちだが、アウトバウンド需要が昨年からプラスに転じ、今年も伸びを維持し続けていることで、航空路線にも追い風が吹き始めている。
例えば、インバウンドの影響が強いとは言え、関空路線では下期はカンタス航空のシドニー線、スクートのシンガポール−関西−ホノルル線、来年度上期からルフトハンザドイツ航空がフランクフルト線のデイリー化を決め、エールフランス航空がパリ線、フィンエアーがヘルシンキ線のデイリー化を検討するなど、長距離路線が拡大しつつある。
シルクエアーは、冬期スケジュールから広島−シンガポール線に就航。親会社のシンガポール航空が14年前に撤退した同路線を復活させた。
また、2009年に成田−ナンディ線を運休したフィジー・エアウェイズ(旧エア・パシフィック航空)は、来年5月ゴールデンウィークに日本からチャーター便の運航を計画、9年ぶりの定期便再開を視野に入れる。ニューカレドニアのエアカランも2019年から日本路線の機材の大型化を検討する。
成田空港の冬期スケジュールを見ると、欧州線、グアム線、香港線の減便はあるものの、アジア線、太平洋線、オーストラリア線の増便が全体の国際線の発着回数を押し上げている。
ANAの成田−メキシコシティ線を新規就航、ロサンゼルス線を増便、チェジュ航空の増便、JALのメルボルン線、コナ線の新規就航、エアプサン、エアソウル、インドネシア・エアアジアX、カンタス航空、春秋航空日本が新規路線就航、セブパシフィック航空、香港航空が増便により、過去最高の国際定期便の運航回数となった。
オーストラリア線やアジア路線の開設は旺盛なインバウンド需要によるものだが、ハワイをはじめとするリゾート路線はアウトバウンド需要路線であり、こうした路線が増便、新規就航、あるいは再開されることは「海外旅行復活」として特筆される。
関西−ホノルル線は日本航空、デルタ航空、ハワイアン航空が各デイリー、エアアジアXとスクートが週4便の運航と増加している。
東京−ホノルル線は羽田線がハワイアン航空週11便、ANAデイリー、成田線がJAL1日4便、ANA1日2便、ユナイテッド、デルタ、ハワイアン、大韓航空各1日1便と毎日10便運航する。
国際線の上期の旅客数を見ると、関西空港は前年比12%増の過去最高だが、外国人の16%増に対して日本人は3%増にとどまっており、2010年以降、市場は横ばい傾向にある。既に外国人と日本人の比率は7対3まで開いている。
関西空港は訪日インバウンドのゲートウェイとしての存在が高まっており、国際線のLCC比率は既に4割を占めている。国内線を合わせたLCC比率も5割を超えている。
これに対して、成田空港の上期旅客数は外国人が10%増、日本人が2%増で、日本人旅客は微増にとどまっている。LCC比率は国内線が71%、国際線が18%で、全体では31%にとどまる。
とくに、国際線LCC比率は関空の半分にも満たず、成田の国際線LCC化率はまだまだ低い。成田・羽田の首都圏空港はオープンスカイに限界がるため、関空にLCCに流れることは否定できない。
ただ、ハワイ、グアムをはじめアジア・太平洋のリゾート路線の増便・新規就航は、アウトバウンド需要の拡大に不可欠で、とくに、これらの路線にLCCが参入すれば、若者や若い家族などの旅行需要促進に大いに貢献することは間違いない。(石原)