ハワイは業界の生命線
日本−ハワイ線の供給が活発化している。日本航空(JAL)とハワイアン航空(HAL)は包括提携に合意し、来年3月25日の夏期ダイヤからコードシェア運航、マイレージプログラム、ラウンジの相互利用などを実施するとともに、数カ月以内に日米両政府にATI(独占禁止法適用除外)を申請し、日本ーハワイはもとよりアジアで共同事業を展開する計画を明らかにした。
ハワイ線は、JALが成田−ホノルル、成田−コナ線、関西−ホノルル、中部−ホノルルを各1日1便運航。HALは成田−ホノルル、羽田−ホノルル、羽田−コナを各1日1便、関西−ホノルルを1日1便、新千歳−ホノルルを週3便運航している。
HALは日本−ハワイ線とともに、ハワイ州内路線を1日約170便運航。これらの路線にJALのコードが付く。JALとしては、ATIが認められれば、ハワイ路線の競争に大きなアドバンテージを得ることになる。
日本ーハワイ線はJAL、HALのほか、全日空(ANA)、ユナイテッド航空(UAL)、デルタ航空(DAL)、チャイナエアライン(CAL)、大韓航空(KAL)が運航。加えて、LCCのエアアジアXが6月28日から関西−ホノルルに参入し、航空会社がひしめき合う競合路線となった。
今回のJALとHALの包括提携に伴い、ANAとHALの提携が解消され、ANAは同じスターアライアンスのUALとの提携強化で、JAL-HALとの競争を迎え撃つ。とくに、ANAは2019年にハワイ線に超大型機のA380を投入することから、ハワイ線の競争は一段と激しさを増すことになる。
加えて、12月19日にはLCCのスクートが関西−ホノルル線に就航する。エアアジアXとスクートはホノルル線で、低運賃キャンペーンを仕掛けている。
日本からハワイのアウトバウンドは、高品質・高価格帯と低価格帯にマーケットが、より二極化していくことが予想される。ハワイ州観光局(HTJ)もファーストタイマーからリピーターまで、若者からシニアまで、ハワイ商品がバラエティに富んだものとなることを期待している。
今年のハワイへの旅行者数は、1-8月累計でトータルが前期比4.5%増の624万人。米国内市場が好調で、米西部から3.7%増の258万人、米東部から8.2%増の141万人、カナダからも6.6%増の35万人とそれぞれプラスで推移している。
日本市場も堅調で、1-8月は6.7%増の103万人と、4カ月を残して100万人の大台を超えた。1-8月の日本人の海外旅行者数が5.6%増の1179万人だから、ハワイ方面は全体の伸びを上回る好調ぶりを示している。
直近の8月をみると、ハワイへの日本人旅行者数は5.2%増の16万人。8月の日本からハワイへの直行便の供給席数は15.6%増の29万7000席。今後、さらに供給は増加する。とくに、関西−ホノルル線の8月の供給席数は60%増の3万8000席に増加している。今後は、激しい競争とともに需要を拡大しないと、路線維持が厳しくなるかもしれない。
海外旅行需要を方面別に見ると、ヨーロッパはテロ事件の影響から回復しているが、政治問題による東アジアの低迷に加えて、グアムは北朝鮮のミサイル攻撃問題で需要が減退している。
年間100万人以上のアウトバウンド・メガ市場では、ハワイの好調が抜きん出ている。最近の路線開設はインバウンド需要の成長を受けてのものが多いが、ハワイの場合はアウトバウンド需要の拡大に対応してのものだ。
アジアからハワイを訪れる旅行者は増え続け、JALとHALの共同事業もそれを睨んでのことだろう。アジアからの旅行者が増えても、日本からハワイへの旅行需要は維持しなくてはならない。一時期、低価格化の煽りを受けて、日本−ハワイ路線の撤退、減便が相次いだが、日本人のハワイ志向は安定している。
FIT化、OTA化は今後も続くが、日本の旅行業界にとってハワイは生命線である。ハワイへの供給増に対応した需要拡大のために、多様な旅行商品の造成を期待する。(石原)