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2023.04.17

【潮流】問われる専門性

 JATAアウトバウンド促進協議会(JOTC)は4月14日に羽田空港で開催した総会で、JOTCウェビナー視聴者に対して今年3月下旬に実施した視聴者アンケート調査の概要を発表した。そのアンケート結果を見ると、これからの旅行業界、旅行商品の方向性が垣間見えてくる。
 まず、3月13日から実施したマスク着用義務化免除、5月8日の新型コロナ感染症法上の2類から5類への引き下げの海外旅行への問い合わせ、予約は「明らかに増えた」が34.6%、「僅かに増えた」が34.3%で、両方合わせれば「増えた」が70%近くに上った。このアンケートは3月末までの実施で、4月以降はさらに増えているはずで、コロナに対する規制緩和が海外旅行に対しては好影響が出ている。
 ただ、海外旅行への参加懸念事項については、「旅行代金の高騰」が最も多く、2番目の「物価高騰に伴う経済的困窮」を合わせれば、国内外の物価高、所得水準の低迷が海外旅行に最も大きな影響を与えている。コロナによる海外旅行への不安、周囲からの同調圧力などの要因は5類への移行によってさらに小さくなっていくだろうが、旅行代金の高騰は懸念材料として逆に大きくなっていくだろう。 そうした中で、3月以降に問い合わせ・予約の多いエリアは東アジアで、海外旅行再開を牽引するのは韓国、台湾などの東アジアになるようだ。加えて、東南アジア、ハワイとなろうが、東アジアに次いで問い合わせ・予約の多いのがヨーロッパというのが興味深い。ウェビナー視聴者が旅行業界関係者ということを考えると、募集型企画旅行の中心であるヨーロッパ方面に携わる事業者が多いことも関係しているかもしれない。
 その募集型企画旅行の今後の予測では、アンケートで、「コロナ前の取扱規模に戻ることはない」と答えた人が35.8%に上り、「2025年までに戻る」33.1%、「2026年以降に戻る」27.2%を抑えた。期待値は別として、全体に募集型企画旅行が減っていくと感じることは分かる。
 一方で、海外受注型企画旅行は「2025年までにコロナ前と同じ規模に戻る」42.6%、海外手配旅行は同じく43.5%と4割を超えた。そして、「OTAの取扱規模と存在感が大きくなる」と答えた人は67.5%に上った。
 これらの傾向はコロナ前にも顕著だったことであり、コロナで海外旅行そのものが激減したことで先延ばしになったが、海外旅行再開に伴って再び顕在化してきたということではないか。
 2019年に海外旅行者数が2008万人と初めて2000万人を超えたときも、OTAのシェアが増加して、旅行会社のシェアが減少していることが指摘された。その傾向は続くだろうし、OTAもAIの進化で、さらに変容していくことが予想される。
 海外旅行が本格的に再開され、それに伴い、募集型企画旅行がコロナ前の取扱規模に戻ることが理想だが、現状を見ると企業によって、その状況は異なっていくと考える。
 旅行会社で海外旅行の取扱いが増えているのはエアオンやダイナミック・パッケージなどの利益幅が薄いものだ。それによって、海外旅行取扱人数は増え、取扱額は増えるだろうが、肝心の粗利益、営業利益の増加に寄与しているとは言い難い。
 大手旅行会社は海外旅行がコロナ禍で激減した中で、BPO事業などの旅行外事業の拡大で経営を黒字化した。とくに旅行外事業の利益率は高く、そのために旅行事業の利益率の低さが際立った。
 旅行事業の利益率の低さは、これまでずっと指摘されていた。海外旅行の復活は旅行事業の高収益化と表裏一体であり、コロナ前のような低収益事業を再び続けたら、行きつく先は見えている。
 中小の旅行会社の中には、海外旅行商品の予約が好調な会社も出てきている。この3年間のブランクで、今年はより高額なツアーが好調という。ただ、これは今年だけの「特需」のようなもので、来年からは専門性により磨きを掛けたツアーを造成するという。
 「Web3.0」やチャットGPTに代表されるAIの進化で、OTAもこの先どうなるか分からない。チャットGPTではできないツアーを造成できるのが、旅行会社の強みと思いたい。今後さらにプロフェショナルな専門性が問われてくる。(石原)